服薬コンプライアンス向上のための記事まとめ|Dr.竜平の服薬コンプライアンス

更新日: 2019年11月17日 Dr. 竜平

認知症の家族が薬を隠してしまう…内科医が体験した服薬の課題

認知症の家族が薬を隠してしまう…内科医が体験した服薬の課題の画像

高齢化が進むにつれて、服薬コンプライアンス不良な患者が急激に増加しています。理由としては本人の病識の無さや認知機能の問題、家族の理解などが挙げられます。
私は内科医として、そういった背景を考慮しつつ、薬剤師と相談し、いかにして内服していただくか、処方を調整することがあります。また一包化や服薬カレンダーを用いて内服忘れや過剰内服を防ぐ指導もしています。
本シリーズでは、クリニックの副院長として働く内科医の私が、日々、診療の現場で考える「服薬コンプライアンスの課題」と、薬剤師に期待することをお伝えします。


第1回は家庭ごとに特殊な事情があること、それも考慮に入れて対応する必要があることを考えさせられた体験です。薬剤師にぜひお願いしたいことについてもふれています。

目の前に大量の残薬、原因は家族の認知症

先日、患者さん宅で、ぞっとする体験をしました。
その患者さんは、80代の男性で高血圧に対してOD錠の降圧薬を処方していました。しかし外来での血圧がいつも160-180mmHgでありコントロールが難しいと感じていました(なお内分泌疾患などの精査は希望されておらず実施していません)。

それから数ヶ月後、「倦怠感が強いため往診をお願いしたい」との依頼がありご自宅へ伺うことになりました。幸い、大きな問題はなく私が帰宅しようとした際、初めて見る奥様がお菓子の箱を持って現れました。
中を見て驚きました。何とその箱には私が処方した降圧薬が大量に残っていました。
つまり、血圧が下がらないのは内服を全然飲んでいないからだったのです!

後日、外来でいらした男性患者さんに話を伺うと「妻は認知症ですが身体は動き、いつも薬をどっかに持ってかれてしまっていました。飲んでないと先生に言うのは忍びなく言い出せませんでした。」とのことでした。

薬剤師にだけ相談する患者さん

このように、この方の状況は偶然往診に行かなければ決してわかりませんでした。またご高齢の方の中には、医師には気軽に話してはいけないと考え、ひたすら耐え忍ぶ方も多いと個人的な印象を受けます。

私は、薬剤師の方に、簡単で良いので“声掛け”をしてあげて欲しいと思っています。「体調は変わりないですか?」「お薬に関して困っていることはありませんか?」の一言で救われる方も多数いると私は考えています。
特に最近は在宅医療を受ける患者も多く、訪問薬剤に行ってみたら意外な事実を知り得たということもあると思います。また薬剤師にだけ相談する患者も大勢いると思います。医師は知らないけど看護師、薬剤師、ケアマネジャーはみんな知っている患者さんの事柄は、実はたくさんあるのです。

薬剤師だから知り得た情報をぜひ教えて欲しい

なかなか難しいかもしれませんが、薬剤師の先生には「〇〇さんはXXという状況なので、△△(剤形、内服頻度など)である薬はどうか」とご提案いただければ助かります。

私をはじめ、多くのクリニックの医師は、患者さんについて外来での一側面しか知りません。そして医師というフィルターを通してのみ患者さんと接しています。なるべく本音を引き出したいとは思いつつも、時間的制約もあり難しいのが現状です。薬剤師の皆さんから情報を共有いただき、患者さん一人一人がより良い毎日を過ごせるようになれば良いなと思います。  

次回は「医師が意識しにくい、一包化の落とし穴」についてお伝えします。

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Dr. 竜平
ドクター りゅうへい

地方の医学部を卒業後、大学病院で脳神経内科診療に従事しました。その後、実家のクリニックに副院長として入職し内科診療を行なっています。また在宅医療にも興味を持ち診療業務を行なっています。趣味は格闘技やプロ野球観戦です。

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