服薬コンプライアンス向上のための記事まとめ|Dr.竜平の服薬コンプライアンス

更新日: 2019年12月1日 Dr. 竜平

医師が意識しにくい、一包化の落とし穴

医師が意識しにくい、一包化の落とし穴の画像

高齢化が進むにつれて、服薬コンプライアンス不良な患者が急激に増加しています。理由としては本人の病識の無さや認知機能の問題、家族の理解などが挙げられます。
私は内科医として、そういった背景を考慮しつつ、薬剤師と相談し、いかにして内服していただくか、処方を調整することがあります。また一包化や服薬カレンダーを用いて内服忘れや過剰内服を防ぐ指導もしています。
本シリーズでは、クリニックの副院長として働く内科医の私が、日々、診療の現場で考える「服薬コンプライアンスの課題」と、薬剤師に期待することをお伝えします。


前回は「内科医が体験した服薬の課題」についてでしたが、今回は、恐らく医師があまり意識していない問題について取り上げます。

薬剤数が多いため一包化、ところが思わぬ落とし穴が

先日、勉強になった体験をしました。

患者さんは90歳近い女性で息子夫婦との同居に伴い当院へ通院を開始しました。初診は前医からの処方(降圧薬、痛み止め、胃薬、眠剤など7種類ほど)を継続することとし、薬剤数も多いため一包化処方としました。

ところが、1週間すると朝一番で電話があり薬を飲んだら倦怠感が出て困っているとのこと。来院時に話を聞くと痛み止めで胃部不快感が出ている可能性があり、痛み止めを中止することにしました。

それから4日後、同じ患者さんが、倦怠感が出たと外来を受診しました。診察すると収縮期血圧が通常110〜120mmHg程度の方が190mmHg近くに上昇しているのです。

おかしいと思い、よくよくお話を伺うと・・・なんと痛み止めだけでなく降圧薬も一緒に飲むのをやめてしまっていたのです!!一包化したがゆえに、痛み止めがどれか分からず、全部飲むのをやめてしまったそうです。

患者さんの薬の理解、薬剤師にお願いしたいこと

一包化されていると患者さんは「朝飲む薬」という意識はあっても薬の詳細な内容はあまり意識していないことがあります。また薬のことを「あのピンク色のですか」とか「細長くて大きいやつですか」というように中身より色や大きさで認識し、名前はおぼろげにしか知らないことが多々あります。高齢になればこの傾向は顕著であり、そうした状況を、しっかり意識してあげねばと反省する次第でした。

通常、処方時は薬剤師が服薬指導をしますが、薬を中止する場合、患者さんは薬局へ行かずそのまま自宅へ帰宅します。ですので、服薬指導の機会は外来の診察時のみとなります。しかし医師は、一包化した状態から減薬することの負担を意識していないことがあるかもしれません。これは病院では医師の指示一つで看護師・薬剤師が介入し、ことなきを得ているからと推察します。しかし私のようなクリニックの外来ではそうはいきません。

服薬コンプライアンスにおいて、「医師が見落としている点があるかも?」という視点をぜひもっていただきたいと思います。また、状況によっては薬局に連絡し服薬についてご相談する場合もあります。

薬剤師の介入でこういった患者さんの服薬状況は劇的に改善される可能性があるのです。患者さんのより良い日々のため皆が協力し合うことが大切だと思います。

次回は「患者さんの家族の服薬コンプライアンス」についてお伝えします。

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Dr. 竜平
ドクター りゅうへい

地方の医学部を卒業後、大学病院で脳神経内科診療に従事しました。その後、実家のクリニックに副院長として入職し内科診療を行なっています。また在宅医療にも興味を持ち診療業務を行なっています。趣味は格闘技やプロ野球観戦です。

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