家族の思い込みが命に関わることも!患者さんの家族の服薬コンプライアンス

高齢化が進むにつれて、服薬コンプライアンス不良な患者が急激に増加しています。理由としては本人の病識の無さや認知機能の問題、家族の理解などが挙げられます。
私は内科医として、そういった背景を考慮しつつ、薬剤師と相談し、いかにして内服していただくか、処方を調整することがあります。また一包化や服薬カレンダーを用いて内服忘れや過剰内服を防ぐ指導もしています。
本シリーズでは、クリニックの副院長として働く内科医の私が、日々、診療の現場で考える「服薬コンプライアンスの課題」と、薬剤師に期待することをお伝えします。
前回は「医師が意識しにくい、一包化の落とし穴」についてでしたが、今回は私が病院に勤務していた頃、患者さんのご家族が、良かれと思って飲ませた薬を聞いて、凍り付いた事例です。
脳出血で救急搬送された患者さん。家族がアスピリンを飲ませていた
患者さんは当時50代の女性で、右手の麻痺を主訴に当時勤めていた病院に救急搬送されました。診察すると顔面を含む右半身の麻痺があり、収縮期血圧が200mmHgと異常高値でした。頭部CTを施行すると典型的な脳出血の症状を呈しており、治療のため緊急入院となりました。一通りの救急処置を終えた段階でご家族に状況説明をすることになりました。
ご家族は患者さんのお母様お一人で、恐らく80歳を越えていると思われました。病状、治療方針、今後の流れを一通り説明し、患者さんに面会してもらおうとしたときのことでした。…