服薬コンプライアンス向上のための記事まとめ|Dr.竜平の服薬コンプライアンス

更新日: 2019年12月29日 Dr. 竜平

患者も家族も高齢者…。薬剤師も積極的に申し送りノートに参加してほしい

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高齢化が進むにつれて、服薬コンプライアンス不良な患者が急激に増加しています。理由としては本人の病識の無さや認知機能の問題、家族の理解などが挙げられます。
私は内科医として、そういった背景を考慮しつつ、薬剤師と相談し、いかにして内服していただくか、処方を調整することがあります。また一包化や服薬カレンダーを用いて内服忘れや過剰内服を防ぐ指導もしています。
本シリーズでは、クリニックの副院長として働く内科医の私が、日々、診療の現場で考える「服薬コンプライアンスの課題」と、薬剤師に期待することをお伝えします。


前回は「患者さんの家族の服薬コンプライアンス」についてでしたが、今回は私が病院勤務時代に体験した老老介護のエピソードと在宅医療での申し送りノートについて紹介します。

薬剤師が老老介護の危険を察知できる

厚生労働省の推計によると、2025年には高齢者人口が約3,500万人に達するとされています。急激なスピードで高齢者が増加していることは臨床をしていると、日々実感します。今回の事例は、そんな超高齢化社会を体感した出来事です。

とある冬の日、救急外来の当直をしていたときのことです。救急隊より「102歳女性の意識障害」で受け入れ要請がありました。「もともとどのくらい動けたのか?」などいろいろな思いを抱きながら待っていると、救急車が到着しました。救急車の扉が開くと、見た目は80代くらいの女性が降りてきました。「あれ?102歳にしては若いな…。しかも意識障害という話だったけど歩けているじゃないか…」というのが第一印象でした。ところがその方から言われた「先生、母をなんとかお願いいたします」のひと言に私は驚きました。なんと、私が患者と思っていた方は娘さんだったのです!そしてストレッチャーにはたしかに見た目が100歳くらいの患者さんが乗っていました。その患者さんは検査の結果、重症の脳梗塞と判明し緊急入院になりました。

私が担当になり娘さんからお話を伺うと、患者さんはデイサービスで元気なお婆さんとして有名だったそうです。むしろ娘さんの方が膝の状態が悪かったり、認知症の旦那さんの介護があったり、とても大変、と疲れてしまっている様子でした。

このように超高齢者を高齢者が介護することは、決して稀な例ではありません。また身寄りのない高齢の夫婦が何とか生活していることもあれば、親子で施設に入所していることもあります。

一番大変なことは介護者が介護不能になり、事実上の共倒れ状態になることです。これを避けるためにも、医療者は、患者さんのみならず介護者の状態も注意して観察する必要があると考えます。些細な言動、例えば「最近いろいろなことがしんどくて…」などを拾い上げて対処すべきでは思います。日常的に患者さんやご家族に接する機会の多い薬剤師は、こうした家族の状況を察知できる機会が多くあると思います。ぜひ、そうした視点を持って、接していただければと思います。

在宅医療では、申し送りノートが危機を救うことも

在宅医療の現場では、老老介護の状況がよりはっきり見て取れます。往診に行くたび「薬以前に、ちゃんと食事がとれているのだろうか?」と考えつつ、ヘルパーさんからの申し送りノートで状況を把握することが多くあります。

医師は、訪問看護スタッフや訪問介護スタッフから聞いたこと、ノートに記入されている情報から、治療方針の継続や変更を考えています。訪問薬剤師が記入した患者さんの服薬状況や内服で困っていることをノートで目にしたときには、速やかに対応するよう心掛けています。ですので、薬剤師には、申し送りノートにどんどん忌憚のない意見や気づきを記入してほしいと思います。

些細な記載から間一髪危機的な状況を回避できたケースもあります。例えば、患者のデイサービスの頻度を増やしたり、一時的にショートステイに行ってもらうことで、介護者の負担を軽減し、問題を解決できることもあります。

職種によりできること・できないことがあるのは仕方がありません。患者さんに関係する医療者みんなの意見を集約して患者さん本人により良い状況を作り出すことが、チーム医療の目標です。薬剤師の申し送りノートへの積極的な参加をぜひお願いしたいです。

次回は「薬剤師が医師とうまく付き合う方法」についてお伝えします。

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Dr. 竜平
ドクター りゅうへい

地方の医学部を卒業後、大学病院で脳神経内科診療に従事しました。その後、実家のクリニックに副院長として入職し内科診療を行なっています。また在宅医療にも興味を持ち診療業務を行なっています。趣味は格闘技やプロ野球観戦です。

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