服薬コンプライアンス向上のための記事まとめ|Dr.竜平の服薬コンプライアンス

更新日: 2020年1月5日 Dr. 竜平

薬剤師が医師とうまく付き合う方法〜医師は変わり者が多い?

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高齢化が進むにつれて、服薬コンプライアンス不良な患者が急激に増加しています。理由としては本人の病識の無さや認知機能の問題、家族の理解などが挙げられます。
私は内科医として、そういった背景を考慮しつつ、薬剤師と相談し、いかにして内服していただくか、処方を調整することがあります。また一包化や服薬カレンダーを用いて内服忘れや過剰内服を防ぐ指導もしています。
本シリーズでは、クリニックの副院長として働く内科医の私が、日々、診療の現場で考える「服薬コンプライアンスの課題」と、薬剤師に期待することをお伝えします。

参考資料:
(1)『成功への情熱』(PHP研究所/2007)稲盛和夫
(2)『最高のコーチは、教えない。』(ディスカヴァー・トゥエンティワン/2018)吉井理人


昨今、服薬コンプライアンスの実現とともに服薬アドヒアランスの向上にも注目が集まっています。アドヒアランスの向上には、患者さんの信頼を得るために、医療者側の連携体制が大切です。前回は「チーム医療の情報共有は申し送りノート」についてでしたが、今回は、個人的に大事だと考える、「医師との関わり方」について、体験談をもとに、紹介します。普段から医師と接する機会の多い薬剤師にもぜひ知っていただきたいと思います。

医師が考察する「医師は変わっている人が多い」理由

医師とうまく付き合うことは業務上、大事な話だと個人的に思います。薬剤師を含む医療関係者から医師への苦情は、よく耳にします。先日参加したとある講演会では「医師は変な人が多く、扱いにくい人ばかり」と発言された演者がいました。おそらく読者のみなさまもなんとなくこのように感じたことがあるのではないでしょうか?「医師は変わっていて関わりにくい」…私自身も個人的に同じように思いますし、医師は程度の差はあれ変わった人が多いように感じます。

(1)競争に勝ち抜いたものが医師となる

これは医師を取り巻く環境が影響していると思います。日本の場合、熾烈な大学受験での競争を勝ち抜いて医学部に入学します。この時点では“偏差値”という尺度で医学部生は勝ち組になります。その後、進級のため地獄のような試験に勝ち続けて医師国家試験の合格を掴み取ります。つまり、ひたすら競争に身を置き勝ち抜いたものだけが医師になります。この時点でかなりプライドが高い人が増えていると思います。

(2)初期研修でプライドが砕かれる

こうして築かれたプライドは、初期研修医になって崩れ去ります。医学部では学問的な知識は付きますが、臨床は実践の現場で身につくものです。医師となり病院に勤務して初めて“リアルな臨床”に対峙するわけです。よほど優しい先輩や上司がいれば手厚いサポートがあるかもしれませんが、多くの場合は十分なサポートが無くすぐに患者さんを割り当てられます。
そして看護師からは速射砲のようにいろいろなお願いが降ってきます。その処理がとどこおれば、研修医だろうと容赦ない言葉をいわれます。この時点で学生時代に作られたプライドは粉々です。

(3)仕事になれ、ちやほやされて自信を取り戻す

大体半年ほどで徐々に仕事もできるようになり、自信を取り戻します。実はこの後が問題です。
医師は仕事ができるようになるにつれ“誘惑”が増えていきます。若手看護師や製薬会社MRからちやほやされます。これにより崩れ去ったプライドが徐々に復活していきます。「先生、先生」と持ち上げられる状態を年々繰り返していくうちに態度が尊大になります。(もちろん、人格的にも医学的にも立派な先生も多数いらっしゃいます、あしからず…。)
かつての私も例に違わず態度が悪く、病院の薬剤部部長に一喝され反省したものでした。このように注意してもらえた経験は貴重で、今は「あのとき、怒られていて良かった」と思うほどです。
上記のような経緯を経て“変わり者の医師”が作られていくと私は考察しています。

変わり者医師に提案する方法

ではこのような“変わり者医師”とどう関わっていけば良いでしょうか?私はイソップ童話の「北風と太陽」が参考例になると思っています。このような医師に対して真っ向勝負に出ることはプライドを刺激する可能性があります。「確認ですが…」「こちらについてご教授いただければ…」と、医師を立てつつ物事を進める方法が、一番効果的だと私は思います。

以前こんな出来事がありました。
私は上司の指示でとある循環器系の薬を処方しました。すると薬剤部の先生から「竜平先生、その薬ですが◯◯という副作用が出たと注意喚起がありました。この患者さんの採血データを見るとXXの数値があまり良くないようです。このままの投与量で良かったですか?それとも減量しますか?」と電話がありました。
電話では即答できず、調べた結果、減量投与が妥当と考え上司に相談し、減量することになりました。そこで、薬剤師の先生に折り返し連絡をしたところ、「ありがとうございます。いやあ、電話しても文句をいわれることもあるので、先生みたいに一所懸命話を聞いてくれるとうれしいですよ。困ったことがあれば個人PHSにいつでも電話くださいね」と言われました。
このとき私は医者になり数カ月、なんと薬剤師の先生は薬剤部の副部長でした。知識は私の方がはるかに劣っているのに、立場を尊重してもらいうれしかったです。そして患者さんがトラブルなく退院されたことから、薬剤師の先生との関わりがとても重要と感じた一例でした。ちなみに、これ以降も判断に迷うような難しい臨床場面でアドバイスをいただき、助けてもらいました。

良い協力関係が、チーム医療のパフォーマンスを向上される

今でも、当時お世話になった薬剤師の先生とは付き合いがあり、学会で一緒になると食事に行くほどです。まさに良好な関係を構築した例だと思います。
逆に言えば、協力関係が構築できないと、チームのパフォーマンスを驚くほど低下させます。このことはプロスポーツの世界で常識ですが、部門が分かれている医療の世界ではまだまだ浸透していません。しかし、患者さんの治療にはそれぞれの部門の力が必要不可欠です。
われわれは「病める患者さんに対して寄り添いたい」という心を持って今の仕事に就いたはずです。お互いの職種を尊重し、できないことをお互い補うという意識を持つことが重要だと考えます。「患者さんのために他医療関係者とより良い協力関係を作っていきたい」、多くの医師はそう考えています。時には、誤解を与えてしまうことをもあるかもしれませんが、ひとりの医師として私からも、薬剤師のみなさんにご協力をお願いします。

次回は「薬の味と服薬コンプライアンス」についてお伝えします。

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Dr. 竜平
ドクター りゅうへい

地方の医学部を卒業後、大学病院で脳神経内科診療に従事しました。その後、実家のクリニックに副院長として入職し内科診療を行なっています。また在宅医療にも興味を持ち診療業務を行なっています。趣味は格闘技やプロ野球観戦です。

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