服薬コンプライアンス向上のための記事まとめ|Dr.竜平の服薬コンプライアンス

更新日: 2020年1月19日 Dr. 竜平

医師が知りたいお薬手帳の中身!薬剤師に確認してほしいこととは?

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高齢化が進むにつれて、服薬コンプライアンス不良な患者が急激に増加しています。理由としては本人の病識の無さや認知機能の問題、家族の理解などが挙げられます。
私は内科医として、そういった背景を考慮しつつ、薬剤師と相談し、いかにして内服していただくか、処方を調整することがあります。また一包化や服薬カレンダーを用いて内服忘れや過剰内服を防ぐ指導もしています。
本シリーズでは、クリニックの副院長として働く内科医の私が、日々、診療の現場で考える「服薬コンプライアンスの課題」と、薬剤師に期待することをお伝えします。


前回は「薬の味と服薬コンプライアンス」についてでしたが、今回は、画期的発明ともいえるお薬手帳の活用方法を考えてみたいと思います。私自身も患者さんの診察で、お薬手帳の力を何度も借りました。その経験をお話します。

お薬手帳は、電子カルテと異なる重要性を持つ

お薬手帳は、患者さんの普段の内服薬が一目瞭然でわかりとても便利です。特にかかりつけでない患者やいろいろな診療科を受診している方などの内服の把握に大いに役立っています。お薬手帳は、手帳にシールを貼るという一見アナログなやり方ですが、どの医師がいつ処方してどの薬局で受け取ったかなども記載されており、電子カルテとはまた違う重要性があります。
例えば、救急で運ばれて来た患者さんで自院になにも情報がなくても、お薬手帳さえあればかかりつけ医や内服を把握できます。また、処方の日付などの情報から、いつからどのような薬を飲んでいるか、いないかも知ることが可能です。
このような事例もあり、病院で当直を担っていた時はお薬手帳を本当に重宝していました。もちろん、今でも大切な情報源であることは間違いありません。個人的には医療制度として画期的な発明のひとつと思います。

救急搬送されてもお薬手帳があれば、症状の判断に役立つ

以前私が経験した症例でお薬手帳が大いに役立った一例をご紹介しましょう。
患者は高齢の男性で、道端で倒れているところを通行人が発見し当院へ搬送されました。たまたまお薬手帳が上着のポケットに入っており、内服でワルファリンを飲んでいることがわかりました。私は、血圧、意識状態やワルファリンを内服している経緯から、頭蓋内病変、特に脳出血の可能性が高いと判断しました。
頭部CTを撮影すると予想通り脳出血の診断でした。このとき頭部CTへ搬送する前に、薬剤部へワルファリンの中和薬を用意するよう連絡していたため、脳出血と診断後、すみやかに薬剤の投与を行うことができました。
このようにお薬手帳は治療上も非常に有用です。しかしながら、高齢の患者さんではうまく使いこなせない人も少なくありません。もっとも多いのは、お薬手帳を紛失してしまい貴重な情報がわれわれに伝わらないことです。また、ご家族がお薬手帳を発見できず、かかりつけ医がだれかも本人しかわからない状況も多く、対応に苦慮することもありました。

お薬手帳から服薬コンプライアンス不良を見抜けるのは薬剤師

個人的な印象ですが、お薬手帳を管理できる人は内服コンプライアンスも良好であることが多いと思います。逆もしかりで、お薬手帳を毎回忘れる方やなくしてしまう方は内服コンプライアンスが不良な傾向が見られます。
ある意味でお薬手帳を見ることで患者さんのキャラクターを知ることができるといえますが、外来の現場では、医師がお薬手帳を見る機会はそれほどありません。その理由は、電子カルテが普及し、画面上で処方内容を容易に確認できるためです。
それゆえ、お薬手帳を実質的に管理している薬剤師は、患者のコンプライアンス不良を見抜く上で非常に重要な役割を担うといえるのではないでしょうか。もっともお薬手帳から読み取れる情報を医師とどう共有するかは今後の課題ですが…。
そしてわれわれ医師も頻度はそれほどでないとはいえ、外来でお薬手帳の確認をできればと思います。忙しい外来ですが、小さなことからコツコツ始め患者さんの些細な変化を感じ取れるよう頑張っていければと思います。

次回は「ポリファーマシー対策で薬剤師ができること」についてお伝えします。

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Dr. 竜平
ドクター りゅうへい

地方の医学部を卒業後、大学病院で脳神経内科診療に従事しました。その後、実家のクリニックに副院長として入職し内科診療を行なっています。また在宅医療にも興味を持ち診療業務を行なっています。趣味は格闘技やプロ野球観戦です。

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