服薬コンプライアンス向上のための記事まとめ|Dr.竜平の服薬コンプライアンス

更新日: 2020年2月2日 Dr. 竜平

後医は名医?前医の批判ご法度

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参考資料:
『理不尽に勝つ』(PHP研究所 2012)平尾誠二
『最高のコーチは教えない』(ディスカヴァー・トゥエンティワン 2018)吉井理人

高齢化が進むにつれて、服薬コンプライアンス不良な患者が急激に増加しています。理由としては本人の病識の無さや認知機能の問題、家族の理解などが挙げられます。
私は内科医として、そういった背景を考慮しつつ、薬剤師と相談し、いかにして内服していただくか、処方を調整することがあります。また一包化や服薬カレンダーを用いて内服忘れや過剰内服を防ぐ指導もしています。
本シリーズでは、クリニックの副院長として働く内科医の私が、日々、診療の現場で考える「服薬コンプライアンスの課題」と、薬剤師に期待することをお伝えします。


前回は「ポリファーマシー対策で薬剤師ができること」についてでしたが、今回は、「後医は名医」ということわざから、医療関係者の情報共有について考えてみます。プロの医療者であれば、患者さんに不必要な不安を与えず、よりよい情報共有を目指したいものです。

後医が診断できるのは、前医がしっかり検査をしているから

タイトルにもある「後医は名医」とは「患者さんを最初に診た医師(前医)よりもその後に診た医師(後医)の方がより正確で適切な治療をするため良い医者(名医)のように感じる」ということわざです。
この現象が起こるのは、前医がしっかり検査をしているからともいえます。前医の情報から、後医は「この検査が陰性だから〇〇病の可能性は低い」「前医ではこの症状がなかったけど今はこの症状が出てきた。時間経過からは△△病の可能性がある」というように考えます。
病気の初期段階では必ずしも典型的な症状や検査所見が出ているわけではなく、どんなに優秀な臨床医でも診断が難しいことがあります。そして後医を受診する時点で時間経過も相まって、症状や検査所見が出そろい、あっさり診断が確定する場合も多いです。こうなると患者さんは「前の医者はいろいろ検査してよくわからないといっていたけど、この医者のところなら、すんなりわかった」という感覚を少なからず抱くと思います。
ここで前医の批判はご法度です。理由は「診断ができなかった=ダメな医師」ではないからです。むしろ、次の医師に適切な形で情報提供をして、紹介できる医師は優秀で、臨床能力の高い医師といえます。
残念なことに医療者同士でも前医の批判をする方は少なからずいます。患者さんやご家族は批判で生じる負の感情を敏感に感じ取ります。ちょっとした医療不信を生む可能性がありますし、良い効果を生み出すことはないでしょう。

医師、薬剤師でも同じ。前工程の対応に敬意を持とう

私の臨床現場での経験です。
患者さんがある薬を間違って2錠飲んでしまったことがありました。そのとき、薬剤の半減期を薬剤師に問い合わせました。結果、「内服時間から考えてもう心配することはない」と判明したことを私から患者さんに伝えると、患者さんは安堵され、患者さんのご家族から大変感謝されました。
 これは、薬剤師が適切に情報提供してくれたおかげで、後医(この場合は、最後に患者さんに接した医療者)の私が患者さんから感謝された事例です。
またあるときは、なんども病院を替えている患者さんの対応方法について、その患者さんの担当薬剤師と相談しさまざまな情報を共有しました。おかげで、注意深い対応を心掛けることができ、その方の診療は現在も継続し関係も良好です。このように患者さんにとっては、後医が名医であることは、望ましいことでありますが、そうした状況を作り出すのが、前医や多職種との情報共有だと考えます。

名医の影に多職種の協力あり

私はなるべくさまざまな専門分野の方と意見を交換するようにしています。薬のことで疑問や相談ごとがあれば薬局にどんどん電話を掛けます。
医療関係者は国家資格などの有資格者で、専門家同士、時として議論になることがあります。ただ、建設的に意見交換することで1+1が2以上になり得るのです。

人間であれば嫌なこと、理不尽なことはたくさんあります。仕事は思い通りにいかないことも多いでしょう。ただ、われわれはプロの医療者であることを忘れてはいけません。プロである以上、患者さんに不必要な不安を作り出してはいけません。医療関係者同士、議論や疑問点があれば積極的にやりとりしてもらえば良いと思います(もちろん患者さんに不利益がない状況下において)。
W杯で話題のラグビーと同様に、チーム一丸となり患者さんの幸福を目指して頑張っていけたらいいと思います。

次回は「患者さんやご家族と信頼関係」についてお伝えします。

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Dr. 竜平
ドクター りゅうへい

地方の医学部を卒業後、大学病院で脳神経内科診療に従事しました。その後、実家のクリニックに副院長として入職し内科診療を行なっています。また在宅医療にも興味を持ち診療業務を行なっています。趣味は格闘技やプロ野球観戦です。

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