10月1日施行・長期収載品(先発医薬品)の選定療養化【2024(令和6)年診療・調剤報酬改定】
2024年の診療報酬改定に関する記事をまとめた
「診療報酬改定2024まとめ」はこちら>>
参考記事:長期収載品の選定療養化で処方箋様式を改正、10月から 「医療上の必要性あり」は保険給付も処方箋で明確に
ただし、医師が医療上の必要性により銘柄名処方した場合や、薬局に在庫がない場合などは引き続き保険給付の対象とする。「医療上の必要性がある」と認められる場合について、処方等の段階で明確になるよう、処方箋様式を改正する。医療機関と薬局は、長期収載品の投与に係る特別の料金その他必要な事項を院内掲示することも求められる(資料は、厚労省のホームページ )。
2024(令和6)年は、3回にわたって調剤医療費に関する見直しが行われます。1回目は4月1日に施行される薬価改定。2回目は6月1日に施行される診療報酬改定(調剤報酬改定)と介護報酬改定(調剤関連部分)。3回目は、2024年10月1日に施行される長期収載品(先発医薬品)の選定療養化です。
1.処方箋の新様式
2024(令和6)年度診療報酬改定にともない、療養担当規則の一部見直しが行われました。この見直しの中で、処方箋の新様式が示されています。
保険医療機関及び保険医療養担当規則等の一部を改正する省令<2024(令和6)年 厚生労働省令第35号>
今回変更が行われるのは、処方欄のみです。変更部分に赤線で印をつけてみました。
変更点は、大きくわけて2つ。①変更不可欄に関する変更、②患者希望欄の追加 です。
① 「変更不可」欄に関する変更
変更不可欄については以前から設けられています。処方医が、個々の薬剤について後発医薬品への変更に差し支えがあると判断した場合、「レ」又は「×」を記載した上で、備考欄の「保健医署名」欄に署名又は記名・押印。これを行うことで、調剤を行う薬局の薬剤師に対し、該当する処方については、変更調剤を行うことがないよう伝えることが可能になっています。
今回、「変更不可」欄ならびにその説明に「医療上の必要性があるため」と理由が明記されることになりました。つまり、患者の希望で変更不可にチェックを行うことは不可になったということです。
② 「患者希望」欄の追加
新たに「患者希望」欄が追加されることになりました。処方欄に説明が記載されていますが、「患者の希望を踏まえ、先発医薬品を処方した場合」には「患者希望」欄に「レ」又は「×」を記載することになります。
2.新たな様式での処方箋記載の流れ
処方欄に長期収載品の名称が記載される場合について、どのような場合に各チェック欄に印が付けられ、薬局はどう対応するのか、考えてみましょう。
A:処方医が医療上の必要性から長期収載品を選択した場合→「変更不可(医療上必要)」欄に印
医師が、医療上の理由により、長期収載品でないとダメと判断した場合です。徐放性等の製剤的な理由や、保険適応上の理由が考えられます。この場合、薬局は処方箋に記載されている通りに長期収載品を調剤することになりますが、選定療養の対象ではなく、保険適用となります。もし、何らかの理由で長期収載品が適当でないと薬局が判断した場合は、疑義紹介を行う必要があります。
「変更不可(医療上必要)」欄への印だけでなく、備考欄の「保健医署名」欄にも署名又は記名・押印が必要なので、気をつけましょう。また、「変更不可(医療上必要)」欄に印がある場合は「患者希望」欄に印をつけることはできません。
B:患者が長期収載品の使用を希望した場合→「患者希望」欄に印
医師は長期収載品を使用する医療上の必要性を感じていないが、患者の希望により長期収載品を処方する場合です。この場合、長期収載品を調剤すると選定療養の対象となります。薬局は患者に対して後発医薬品を選択可能なこと、選定療養の対象となることを説明し、それでも長期収載品を希望する場合は選定療養の対象として請求を行います。患者が後発医薬品を選択した場合は、保険適用となり、選定療養の対象とはなりません。
C:医師・患者ともに特に希望がない場合:特に印なし
「変更不可(医療上必要)」欄、「患者希望」欄ともに印がない場合、薬局は長期収載品、後発品のどちらを調剤することも可能ですが、長期収載品を調剤した場合は選定療養の対象となってしまいます。
ただし、どのケースでも以下の場合は選定療養の対象から除外されます。
- 後発医薬品を在庫できていないため、長期収載品を調剤せざるを得ない場合
- 薬剤師が医療上の必要性において、長期収載品の方が適していると判断した場合(服用しやすい剤形、長期収載品のみの適応の場合 等)