2024(令和6)年度の薬価制度改革①医薬品の安定供給に関して解説
参考記事:2024年度薬価制度改革の骨子(案)を承認、創薬力を評価医療機関が「後発品を安定供給できる企業」選ぶ指標を可視化
厚生労働省は12月20日の中医協総会(会長:小塩隆士・一橋大学経済研究所教授)に、2024年度薬価制度改革の骨子(案)を提案、承認された。日本の創薬力を強化するため、新薬創出・適応外薬解消等促進加算(新薬創出等加算)の要件や、市場拡大再算定の“共連れ”ルールを見直す。後発品については、安定供給を確保できる企業の品目を医療現場で選定しやすくなるよう、「後発品の安定供給が確保できる企業の評価指標及び評価方法」を導入して可視化、薬価制度でも活用する。改定の度に議論になる「調整幅」(薬価は市場実勢価格に調整幅を上乗せして決定)は2%のまま据え置く(資料は、厚労省のホームページ )。
1.2024(令和6)年度薬価制度改革における改革事項
2024(令和6)年度の薬価制度改革では、大きく分けて2つのテーマに関する改革が実施されています。
一つ目は「ドラッグ・ラグ/ドラッグ・ロス解消に向けた革新的な医薬品のイノベーション評価」、二つ目が「後発品を中心とした医薬品の安定供給の確保のための対応」です。
引用:中央社会保険医療協議会 総会(第574回)議事次第
次に、それぞれのテーマに関して、実際に実施された制度改革の内容について簡単にまとめてみます。
ドラッグ・ラグ/ドラッグ・ロス解消に向けた革新的な医薬品のイノベーション評価
①日本への早期導入を促進するための評価
- 迅速導入加算の新設
- 薬価収載後の外国平均価格調整の見直し
②新薬創出・適応外薬解消等促進加算の見直し
- 企業指標に基づく加算係数の設定(加算額の調整)廃止
- 対象品目の追加(迅速導入品、小児用医薬品)
③新薬の薬価収載時の評価の見直し
- 有用性系加算の定量的評価の評価項目の見直し
- 補正加算における加算率付与の考え方の見直し
④新薬の薬価改定時における評価の見直し
- 薬価改定時の加算の併算定
- 薬価改定時の加算と新薬創出等加算の適用方法
⑤小児用医薬品の評価の見直し
- 小児用医薬品の評価充実
- 成人と小児の同時開発に係る評価
⑥市場拡大再算定の見直し
- 類似品としての適用を除外する範囲の設定
後発品を中心とした医薬品の安定供給の確保のための対応
①後発品の安定供給が確保できる企業の評価
- 安定供給に係る情報の公開
- 安定提供に係る企業指標の導入
②後発医薬品の新規収載時の価格
- 0.4掛けとなる内用薬の条件見直し
- 価格の下支え制度の充実
- 基礎的医薬品の対象範囲拡大
- 不採算品再算定の範囲拡大
このように今回の薬価改定ではかなり多岐にわたる制度改革が実施されています。
2.後発品を中心とした医薬品の安定供給の確保のための対応
医薬品の安定供給に関しては、課題ごとに会議体が分けられ、検討が進められています。
医薬品の安定供給に関する課題別会議体
- 「医薬品の迅速・安定供給実現に向けた総合対策に関する有識者検討会」
- 「医療用医薬品の安定確保策に関する関係者会議」
- 「医療用医薬品の流通の改善に関する懇談会」
- 「創薬力の強化・安定供給の確保等のための薬事規制のあり方に関する検討会」
- 「後発医薬品の安定供給等の実現に向けた産業構造のあり方に関する検討会」
などが該当します。
これらの会議で出された中間とりまとめ等をもとに、安定供給確保のための対応策が実施されます。
引用:中央社会保険医療協議会 総会(第574回)議事次第
2-1.安定供給に係る情報の公開
安定供給等に関する企業情報を可視化・公開することで、医療現場が採用品を選ぶ際に、選定しやすくなります。下の図で示す内容については、現在、各企業がホームページでの公開を解しているところです。
引用:中央社会保険医療協議会 総会(第574回)議事次第
2-2.安定提供に係る企業指標の導入
上記の公開情報をもとに、企業の安定供給体制等を評価し、企業はA〜Cの3区分に分類されます。A区分の企業が発売する後発医薬品のうち、以下のいずれかに該当するものが後発品の安定供給に関する評価の対象となります。