ぺんぎん薬剤師とはじめる!薬剤師のための中医協講座

更新日: 2024年9月19日 ぺんぎん薬剤師

2024年度の薬価改革解説3・ 新薬創出・適応外薬解消等促進加算の見直し

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参考記事:2024年度薬価制度改革の骨子(案)を承認、創薬力を評価医療機関が「後発品を安定供給できる企業」選ぶ指標を可視化

厚生労働省は12月20日の中医協総会(会長:小塩隆士・一橋大学経済研究所教授)に、2024年度薬価制度改革の骨子(案)を提案、承認された。日本の創薬力を強化するため、新薬創出・適応外薬解消等促進加算(新薬創出等加算)の要件や、市場拡大再算定の“共連れ”ルールを見直す。後発品については、安定供給を確保できる企業の品目を医療現場で選定しやすくなるよう、「後発品の安定供給が確保できる企業の評価指標及び評価方法」を導入して可視化、薬価制度でも活用する。改定の度に議論になる「調整幅」(薬価は市場実勢価格に調整幅を上乗せして決定)は2%のまま据え置く(資料は、厚労省のホームページ )。

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今回も令和6年度薬価改定の話題?

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うん。今回は新薬創出等加算の見直しについてまとめてみるよ。

1.令和6年度薬価制度改革における改革事項

新薬創出等加算の見直しは、令和6年度薬価制度改革における「革新的新薬の特許期間中の厄介時」に該当します。

厚生労働省「令和6年度薬価制度改革について(令和6年3月5日版)令和6年度薬価制度改革の概要」

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引用元:厚生労働省「令和6年度薬価制度改革について(令和6年3月5日版)令和6年度薬価制度改革の概要」

令和6年度薬価制度改革における主な改革事項として、新薬創出等加算(新薬創出・適応外薬解消等促進加算)の見直しについては、以下のようにまとめられています。

ドラッグ・ラグ/ドラッグ・ロス解消に向けた革新的な医薬品のイノベーション評価

②新薬創出・適応外薬解消等促進加算の見直し

  • 企業指標に基づく加算係数の設定(加算額の調整)廃止
  • 対象品目の追加(迅速導入品、小児用医薬品)

新薬創出等加算については過去の記事で解説しましたが、令和6年度からは、その内容が見直されることになりました。
新薬創出等加算って何?|ぺんぎん薬剤師とはじめる!薬剤師のための中医協講座

新薬創出等加算が生まれた背景については、過去の記事を読んでいただければと思いますが、その名前の通り、新薬の創出や適応外の解消を進める製薬企業の医薬品開発促進を目的とした加算です。

加算と言うと、薬価算定時に薬価にプラスされるもののように聞こえますが、新薬創出等加算は、薬価改定時に加算され、薬価の引き下げを抑制するものです。

令和6年度薬価制度改革においては、イノベーションの評価、ドラッグ・ラグ/ドラッグ・ロス解消に向けた対応として、より薬価を維持しやすい仕組みにするのと合わせて、創薬ベンチャー等の規模の小さい企業が不利にならないような見直しが行われています。

2024年度の薬価改革解説3・ 新薬創出・適応外薬解消等促進加算の見直しの画像3

最近は新しい企業が開発した薬が承認されることが増えてるもんね。

2024年度の薬価改革解説3・ 新薬創出・適応外薬解消等促進加算の見直しの画像4

世界的な新薬開発を見ていると、大学の研究を元にしたものや、専門分野に特化した創薬ベンチャーが主役になりつつあるんだよ。

2.企業指標に基づく加算額の調整が廃止

令和6年度薬価制度改革以前の新薬創出等加算は、革新的な新薬の薬価を単純に維持するわけではなく、開発企業の評価により、加算に差が出るような制度となっていました。

具体的には、以下の表に示されるような企業指標に基づくポイント制となっており、ポイント合計が上位25%に入っている気表の製品は計算式満額の加算、2ポイント以下の企業の製品の場合は計算式に0.8を乗じた加算、それ以外は0.9を乗じた加算という形でした。

企業指標による評価項目(令和6年度薬価制度改革前)

企業指標の内容 pt
A-1 国内試験(PhaseⅡ以降)
の実施数
上位25%:4pt
中位50%:2pt
A-2 新薬収載実績 上位25%:4pt
中位50%:2pt
A-3 革新的新薬の収載実績の有無 実績あり:2pt
A-4 薬剤耐性菌の治療薬の収載実績 1品目につき:2pt
A-5 新型コロナウイルスの治療等
に用いる医薬品
1品目につき:4pt
B-1 開発公募品(開発着手数) 1品目につき:2pt
B-2 開発公募品(承認取得数) 1品目につき:2pt
C-1 世界に先駆けた新薬の開発品目数 1品目につき:2pt
C-2 特定用途に係る医薬品の開発品目数 1品目につき:2pt

その結果、新薬創出等加算は、企業によって異なる3段階の加算額となっていましたが、今回の薬価制度改革では、その部分を見直し、企業指標による加算額の調整を廃止、新薬創出等加算の対象となれば、すべて薬価が維持される仕組みに変更されました。

厚生労働省「令和6年度薬価制度改革について(令和6年3月5日版)令和6年度薬価制度改革の概要」

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引用元:厚生労働省「令和6年度薬価制度改革について(令和6年3月5日版)令和6年度薬価制度改革の概要」

これにより、大企業でも創薬ベンチャー等の規模が小さい企業でも、画期的新薬を開発し、新薬創出等加算の対象となれば、平等に薬価が維持されるようになりました。ただし、企業指標は完全に廃止になったわけではなく、過去5年以内に企業指標のいずれも満たさない場合には、新薬創出等加算の加算対象外とする新しいルールの中に残ることになっています。

また、これまでは、実勢価格の薬価との乖離率が全品目の平均乖離率を超える品目については、加算が減算されるルールになっていましたが、令和6年度からは、加算の対象外となるルールに変更されています。

新薬創出等加算の算定ルール見直し

項目 変更前 変更後
加算額 企業指標に基づく分類により
計算式により算出される加算
額を調整
改定前薬価を維持する加算額
(計算式は廃止)
企業指標 加算額の調整に利用 過去5年以内にいずれも満た
さない場合:加算の対象外
乖離率 > 平均乖離率 加算額の減算 加算の対象外
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新薬創出等加算の対象になれば改定前薬価が維持される!わかりやすいね。

2024年度の薬価改革解説3・ 新薬創出・適応外薬解消等促進加算の見直しの画像6

企業指標による加算の調整が廃止されたことにより、シンプルでわかりやすいものになったよね。乖離率に関する変更で、これまで以上に値引きは厳しくなるんだろうね。

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ぺんぎん薬剤師
ぺんぎんやくざいし

4年制薬学部を卒業後、大学院では特許を取得。その経験を患者さんの身近な場所で活かしたいと考え薬局に就職。薬局では通常の薬局業務に加え、学会発表、研修講師、市民講座など、様々な形で「伝えること」を経験。自分の得た知識を文章にし、伝えていくことの難しさと楽しさを学ぶ。 薬局での仕事が忙しくなる中、後輩に教える時間がなくなり、伝える場としてブログ「薬剤師の脳みそ」の運営を開始。その後はTwitter、Facebook、Instagramなどの各種SNSも開始し、より多くの薬剤師に有意義な情報を提供できるメディアを目指して運営を続けています。

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