2026年度調剤報酬改定の見通し解説・調剤基本料や地域支援体制加算は?
「薬局のアンテナ」のてっちゃんです!
2026(令和8)年度の調剤報酬改定の見通しについて、連載形式でお届けしています。2025年11月28日、中医協において改定に向けた議論がおこなわれました。今回は「調剤基本料」「地域体制加算」「後発医薬品調剤体制加算」の改定の方向性について解説していきます。
1.調剤基本料(本体部分)はどうなるか?
11月28日の中医協の資料を見る限り、調剤基本料は以下の方向で見直される可能性があります。
医療モールについて調剤基本料2の範囲拡大&特別調剤基本料の引き上げ
調剤基本料2を算定する薬局において、損益率(利益率)と損益差額(利益額)が大きいという結果が出ております。つまり平均的には調剤基本料2の薬局は儲かっているということです。
ただし、調剤基本料2を単に引き下げるのではなく、医療モール型に限定するなどの対応が考えられます。(この点は後ほど再度触れます)
一方で特別調剤基本料Aはその逆の結果が出ています。
引用元:中医協 総-2 7.11.28 調剤について(その2)「薬局の調剤基本料別の損益率、損益差額」 /厚生労働省
特に、特別調剤基本料Aについては、損益率や損益差額がマイナスの結果となっています。いわゆる敷地内薬局であり、医療機関等への賃料支払が負担になっている事実もありますが、しっかりと地域薬局としての機能を発揮している薬局もあることから、点数の引き上げや、薬学管理料の算定制限緩和などが考えられるところです。
集中率の考え方の見直し
集中率の計算方法については、これまでも様々な問題点があり、その都度パッチワーク的に見直しがされてきたところです。
その中で現在議論に上がっているのが、以下の2点です。
1)ビル型の医療モールの処方箋集中率の計算方法の見直し
2)施設調剤を在宅扱いにせずに外来扱いとすることで、集中率が下がる問題への対応
順番に見ていきます。
1)ビル型の医療モールの処方箋集中率の計算方法の見直し
現行ルールでは、処方箋受付が4000回/月を超える場合、上位3つの医療機関の合計処方箋集中率で調剤基本料2への該当性を判断します。
しかし、以下のように医療モール型で医療機関が多数入っている場合、同一モール全体で見ると、処方箋集中率100%であるにも関わらず、調剤基本料1になっているという現状があります。
引用元:中医協 総-2 7.11.28 調剤について(その2)「医療モールにおける処方箋集中率」
/厚生労働省(※吹き出しは筆者追記)
中医協の場でこのような資料を出してきていることを踏まえると、上位3つの医療機関だけでなく、医療モール全体で処方箋集中率を計算するなどの見直しの方向性が考えられます。
2)施設調剤を在宅扱いにせずに外来扱いとすることで、集中率が下がる問題への対応
高齢者施設の調剤において、いわゆる在宅点数を算定している処方箋は集中率の計算から除外されます。
処方箋集中率の計算式解説/筆者作成
逆に言えば、高齢者施設の調剤について、居宅療養管理指導費ではなく服薬管理指導料を算定する場合は、集中率の計算に含まれます。
意図的かどうかはさておき、高齢者施設の調剤を外来処方箋と取り扱うことで、結果として処方箋集中率が下がり、調剤基本料2ではなく調剤基本料1を算定できてしまうケースがあります。(以下参照)
引用元:中医協 総-2 7.11.28 調剤について(その2)「処方箋集中率の計算」 /厚生労働省
中医協ではこの点が問題点として挙げられており、例えば、高齢者施設の調剤分は在宅処方箋/外来処方箋にかかわらず集中率の計算から除外するなどの方向性が考えられます。
特別調剤基本料Aの「除外規定」の見直し
現在、薬局がある建物に診療所が入っている場合は、特別調剤基本料Aにはならないという除外規定があります。
引用元:中医協 総-2 7.10.24 個別事項について(その3)「特別な関係にあたる賃貸借関係の規定②」 /厚生労働省
この除外規定を逆手に取っていると思われる事例があり、問題視されています。
具体的には以下の様な事例です。
本来は特別調剤基本料Aに該当するところ、診療所を同一建物内に誘致することで、特別調剤基本料A(5点)を逃れ、調剤基本料1(45点)を算定している事例です。
引用元:中医協 総-2 7. 10. 24 個別事項について(その3)「特別調剤基本料Aの施設基準における除外規定について」 /厚生労働省
こういった事例があることから、除外規定の範囲を見直す流れになっています。
単に除外規定を無くしてしまうと、いわゆる医療ビル型の薬局が特別調剤基本料Aに該当しうるため、除外規定は残しつつ、その範囲を見直すという方向性かと思われます。
引用元:中医協 総-2 7. 10. 24 個別事項について(その3)「ただし書きの在り方を検討するにあたり、考慮が必要な形態の例②」 /厚生労働省(※筆者一部改変)
へき地などの敷地内薬局は、特別調剤基本料Aを除外する方向性
へき地の場合、自治体が医療機関や薬局を誘致して、地域住民の医療体制を確保している状況があります。
自治体が誘致していること、及びその際は集中率もほぼ100%になり得ることから現行のルールでは特別調剤基本料に該当するケースがあります。
引用元:中医協 総-2 7. 10. 24 個別事項について(その3)「医療資源の少ない地域における課題について」
/厚生労働省
さすがにこういった事情で特別調剤基本料Aに該当するのは趣旨に反することから、例外的に通常の調剤基本料とすることを認める方向性で話がすすみそうです。
2.地域支援体制加算はどうなるか?
結論として、地域支援体制加算に関しては、下記の要件が追加もしくは修正される可能性があります。