長期収載品の選定療養をめぐる議論と、後発医薬品企業の切実な経営課題
2024年10月1日より、長期収載品に対する保険給付に対して、選定療養が導入されることになります。つまり、患者さんが先発医薬品を希望した場合、当該医薬品が長期収載品であれば、薬剤費の一部が自己負担となります。
一方で、後発医薬品の供給は継続的に不安定な状態にあり、とりわけ長期収載品の後発医薬品は入手が困難な銘柄(成分)も少なくありません。
今回の記事では、長期収載品に関わる選定療養の概要を整理したうえで、一部の後発医薬品が供給不足に陥った要因を、後発医薬品企業の経営的な視点から考察します。
長期収載品の保険給付の在り方の見直し
2024年10月1日より、患者が先発医薬品(長期収載品)で調剤を希望した場合には、後発医薬品との差額の一部が自己負担となります。このように、保険適用外の治療にかかわる費用を患者が自己負担し、保険適用内の治療と併用できる医療サービスを選定療養と呼びます。
入院時において、病室を個室に変更する際に発生する差額ベッド代や、歯科治療における金属材料(金歯)に関わる費用など、快適性や利便性に関するサービスのコストや、医療機関や医療行為等の選択によって発生するコストなどが選定療養の対象となります。
長期収載品の処方等又は調剤に関する厚生労働省の通知(保医発0327第11号 )によれば、長期収載品の選定療養について、以下のように記載されています。
長期収載品について、処方箋が交付され、保険薬局において調剤される場合について、医療上必要があると認められる場合及び後発医薬品の在庫状況等を踏まえ後発医薬品を提供することが困難な場合は、引き続き保険給付としつつ、それ以外の場合に患者が長期収載品を希望する場合は、選定療養の対象とし、保険給付は、長期収載品の薬価と後発医薬品の最高価格帯の価格差の4分の3までとすることとしたこと。
つまり、長期収載品を投与しなければならない医学的な理由がある場合、当該後発医薬品の入手が困難な場合を除き、長期収載品を希望する場合には、長期収載品の薬価と後発医薬品の薬価差の25%(1/4)が選定負担として、自己負担額に追加されます【図】。
【図1】長期収載品に対する選定療養のイメージ
長期収載品の定義と具体的な薬剤リスト
長期収載品とは、再審査期間が終了しており、既に後発医薬品が存在している先発医薬品を指すことが一般的です。薬価基準に長期間収載されていることから「長期収載品」と呼ばれるようになりました。
2024年10月より開始される長期収載品の選定療養においては、具体的に以下の❶〜❸の条件を全て満たす医薬品を長期収載品と定義しています1)。