薬剤総合評価調整加算と減処方介入の行方
2024年度の診療報酬改定では、多職種連携によるポリファーマシー対策を推進する観点から、薬剤総合評価調整加算の算定要件が見直されました。今回は、同加算に対する算定要件の改定ポイントを整理し、不適切処方に対する実務上の対応を考察したいと思います。
ポイントはカンファレンス要件の削除と手順書作成
薬剤総合評価調整加算は、入院薬物療法に対する取組を評価した加算であり、2016年度の診療報酬改定時に新設されました。潜在的に不適切な処方薬や、多剤併用(いわゆるポリファーマシー)に関心が集まる中、薬局に勤務する薬剤師においても、具体的な算定要件と求められる業務プロセスに着目することは有用だと思います。
薬剤総合評価調整加算は、入院前に6種類以上の内服薬(抗精神病薬を服用している精神科病棟入院患者では4種以上)が処方されていた患者について、処方内容を総合的に評価した上で、当該処方の内容を調整し、かつ、療養上必要な指導を行った場合、当該患者の退院時に100点を算定することができます。また、退院時に内服薬が2種類以上、減少した場合には150点を加算できます。
これまで、薬物治療の総合的評価にあたっては、医師、薬剤師及び看護師等の多職種によるカンファレンスを実施する必要がありました。多忙な医療職にとってカンファレンスの実施要件が、同加算の算定障壁となっていたケースもあるでしょう。
2024年度の診療報酬では、「ポリファーマシー対策に係るカンファレンスを実施する他、病棟等における日常的な薬物療法の総合的評価及び情報共有ができる機会を活用して、多職種が連携して実施すること」と文言が変更されています。カンファレンスの実施に限らず、情報共有ができる機会を活用することで、多職種連携による総合評価を実施すれば、算定要件を満たすことになります。
【参考】薬剤総合評価調整加算
イ) 患者の病状、副作用、療養上の問題点の有無を評価するために、医師、薬剤師及び看護師等の多職種による連携の下で、薬剤の総合的な評価を行い、適切な用量への変更、副作用の被疑薬の中止及びより有効性・安全性の高い代替薬への変更等の処方内容の変更を行う。
ウ) 処方の内容を変更する際の留意事項を多職種で共有した上で、患者に対して処方変更に伴う注意点を説明する。
エ) 処方変更による病状の悪化や新たな副作用の有無について、多職種で確認し、必要に応じて、再評価を行う。
オ) イ、ウ、エを実施するに当たっては、ポリファーマシー対策に係るカンファレンスを実施する他、病棟等における日常的な薬物療法の総合的評価及び情報共有ができる機会を活用して、多職種が連携して実施すること。
カ) (7)に規定するガイドライン等を参考にして、ポリファーマシー対策に関する手順書を作成し、保険医療機関内に周知し活用すること。
また、薬剤総合評価調整加算の算定にあたり、ガイドライン等を参考にして、ポリファーマシー対策に関する手順書を作成し保険医療機関内に周知すること、とされました。参考とするガイドラインについては、具体的に以下が挙げられています。
- 「高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編) 」(厚生労働省)
- 「高齢者の医薬品適正使用の指針(各論編(療養環境別)) 」(厚生労働省)
- 日本老年医学会の関連ガイドライン(高齢者の安全な薬物療法ガイドライン)
(https://www.jpn-geriat-soc.or.jp/info/topics/pdf/20170808_01.pdf) - 「病院における高齢者のポリファーマシー対策の始め方と進め方 」(厚生労働省)
- ポリファーマシー対策の進め方(日本病院薬剤師会)
(https://www.jshp.or.jp/activity/guideline/20230911-1.pdf)
なお、日本病院薬剤師会のウェブサイトに、「ポリファーマシー対策に関する業務手順書の例示 (https://www.jshp.or.jp/activity/guideline/20240214-1.html)」が公開されています。ポリファーマシー対策に関する手順書の作成においては、同例示を活用すると良いでしょう。