保険薬局事業と薬剤師業界のゆくえ
2024年度の診療報酬改定により、薬剤師を取り巻く環境にも様々な変化があったことと思います。在宅医療の推進、長期収載品に対する選定療養、ポリファーマシーにかかわる業務など、実務で対応すべき課題は多いでしょう。このような課題に適切に対処し、持続可能な事業環境を構築することは、薬剤師業界の将来にとっても重要なことです。
そのような中、2024年6月3日付で、株式会社アインホールディングスが、インテリアや雑貨の販売を行う株式会社Francfranc(フランフラン)の買収を発表しました1)。保険薬局の最大手企業であるアインホールディングスが、業種のみならず顧客層も異なるFrancfrancを買収した理由は、どのようなものだったのでしょうか。
アインホールディングスによるFrancfrancの子会社化は、薬局業界の動向や薬剤師の業務環境に小さくない影響をもたらすかもしれません。連載の最終回では、Francfrancを子会社化する意義を考察したうえで、今後の薬局業界の展望を論じてみたいと思います。
リテール事業が成長するアインホールディングス
アインホールディングスは、2024年6月6日付で2024年4月期決算を発表しました2)。売上高は、新規出店と既存店の売上増加により、前期比11.5%増の399億8,240万円でした。また、経常利益(企業が通常に行っている業務で獲得した利益)は、前期比25.3%増の213億7,700万円でした。
アインホールディングスの事業は、保険薬局(アイン薬局)を中心としたファーマシー事業と、AINZ & TULPE(アインズ&トルペ)を中心としたリテール事業(コスメティック商品やOTC医薬品の販売事業)の2つのセグメントに分けることができます。各セグメントの利益を【表1】に示します。