2021年4月から施行された「調剤感染症対策実施加算」とは
新しい年度が始まり、薬局での加算にも色々と新しく変更になったものがあります。その中でも、2021年4月から算定できるようになった「調剤感染症対策実施加算」は、薬局等の重要な加算の1つです。
しかし、その加算についての情報は豊富でなく、存在自体を知らない薬剤師も少なくありません。そこで今回は、この「調剤感染症対策実施加算」の算定要件やその注意点について簡単に解説します。
また、2021年度は介護報酬の改定も行われましたが、その中に保険薬局業務に関わるものもありました。患者さんや利用者さんからいつ質問されても良いよう、しっかりと下調べをしておきましょう。
- 調剤感染症対策実施加算とは
- 算定できる期間や算定するために届け出は必要?
- 調剤感染症対策実施加算を算定する際の注意点
- 2021年介護報酬改定の保険薬局に関連する内容
調剤感染症対策実施加算とは
「調剤感染症対策実施加算」とは、2021年4月から算定できるようになった加算です。2020年初旬からの新型コロナウイルス感染症の流行によって、たとえば消毒などの手指衛生の徹底、換気システムの構築、アクリル板の設置、体温測定の実施・・・等、多くの医療機関で感染症対策のコストが増しています。こうしたコスト増に対し、全ての医療機関を支援するために新たに設けられた加算です。
ーーー引用ーーー
特に必要な感染予防策を講じた上で、必要な薬学的管理及び指導を行い、調剤報酬点数表の次に掲げる点数を算定する場合、調剤報酬点数表における「調剤料」注6に規定する自家製剤加算のうち、錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤又はエキス剤の内服薬における、予製剤による場合の加算に相当する点数(4点)(以下、「調剤感染症対策実施加算」という。)をさらに算定できることとすること(ただし、クからセまでについては、アからオまでに該当する点数と併算定しない場合に限る。)。
ア 調剤基本料1
イ 調剤基本料2
ウ 調剤基本料3
エ 調剤基本料の注2
オ 調剤基本料の注8の規定により分割調剤を行う場合に、2回目以降の調剤について算定する点数
カ 調剤基本料の注9の規定により分割調剤を行う場合に、2回目の調剤について算定する点数
キ 調剤基本料の注 10 の規定により分割調剤を行う場合に算定する点数
ク 外来服薬支援料
ケ 服用薬剤調整支援料
コ 在宅患者訪問薬剤管理指導料
サ 在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料
シ 在宅患者緊急時等共同指導料
ス 服薬情報等提供料
セ 経管投薬支援料
- 調剤基本料の注4又は注7に該当する場合、調剤感染症対策実施加算を算定できるのか。
- 算定できる。
- 処方箋を同時に複数枚受け付けてアからキまでに掲げる点数を複数回算定する場合、調剤感染症対策実施加算も複数回算定できるのか。
- アからキまでに掲げる点数を複数回算定する場合であっても、1回に限り算定できる。
- 医師の指示により分割調剤を行う場合、調剤感染症対策実施加算を分割回数で除して算定するのか。
- 調剤を行うごとに、分割回数で除していない点数で算定できる。
- 調剤技術料の時間外加算等の算出の際に用いる、調剤基本料を含めた調剤技術料(基礎額)に調剤感染症対策実施加算は含まれるのか。
- 含まれない。
ーーー引用1)ーーー
調剤基本料が減算されていても、「調剤感染症対策実施加算」は算定することができます。さらに、調剤基本料を算定しない場合でも(ク)~(セ)を算定していれば加算できます。
「調剤感染症対策実施加算」は、患者さんが複数枚の処方箋を一度に持参した場合は1回のみの算定ですが、分割調剤を行った場合や、複数回患者さんが来局された場合などには、その都度算定できるようです。
「調剤感染症対策実施加算」は、あくまで感染対策にかかるコストに対する支援を目的とした加算です。そのため、しかるべき感染対策を行っている場合にのみ、算定することができます。
なお、薬局で行う必要のある「特に必要な感染予防策」とは、「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き・第4版」2)を参考にして、下記のような対応を行う場合と記されています3)。
ーーー引用ーーー
- 全ての患者の診療において、状況に応じて必要な個人防護具を着用した上で、感染防止に十分配慮して患者への対応を実施する
- 新型コロナウイルス感染症の感染予防策に関する職員研修を行う
- 病室や施設等の運用について、感染防止に資するよう、変更等に係る検討を行う
ーーー引用ーーー
(参考) https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/000706834.pdf (スライド13)
算定できる期間や算定するために届け出は必要?
「調剤感染症対策実施加算」が算定できる期間は、令和3年4月診療分から9月診療分までです。ただ、「6歳未満の乳幼児へのさらなる加算」のように、9月を過ぎても算定が可能となる場合もあるかもしれません。
調剤感染症対策実施加算を算定するために届け出は必要ありません。薬局でお使いのレセコンのアップデートを行えば算定でき、自動算定の設定をすることもできます。
調剤感染症対策実施加算を算定する際の注意点
「調剤感染症対策実施加算」を算定する際の注意点を解説します。
先述した「6歳未満の乳幼児へのさらなる加算」についての通知を見ると、直接患者さんと対面しない場合は算定できないとなっています4)。 そのため、薬剤師が施設や個人宅へ訪問する場合は本加算を算定することができると思われますが、「0410対応」「オンラインによる服薬指導」での対応では、患者さんと対面しないため「調剤感染症対策実施加算」は算定できないでしょう。
追加で知っておきたい、2021年介護報酬改定の保険薬局に関連する内容
2021年4月に介護報酬が改定され、新しく追加された加算があります。それが「基本報酬への0.1%上乗せ」です。
これは、新型コロナウイルスの流行に対応するために、特例的な措置として算定が可能になったものです。算定できる期間は、令和3年4月から9月までとされており、基本報酬に0.1%の上乗せをすることができます5)。
薬局では具体的にどのような算定になるのか、見ていきましょう。
計算解説
薬剤師が居宅療養管理指導料を算定した場合、1回の訪問あたり517点を算定できます。
その際、517点×1,001=517.517点となり小数点以下は四捨五入なので518点を算定できます。入力としては、517点居宅療養管理指導料と1点の上乗せ加算として算定されます。四捨五入して加算される単位数が1単位未満の場合は1単位に切り上げとなることに注意です。
月に二回訪問して居宅療養管理指導を二回算定する場合、月ごとの算定として計算するので、517点×2×1,001=1,035.034となり、小数点以下を四捨五入すると1,035点を算定します。そのため、1,034点と1点の上乗せ加算として算定されます。そのため、1回目の算定の際に上乗せ加算が算定されていると、2回目の算定の際には上乗せが加算されないことにも注意しましょう(1回目に1点を算定しているため)。
2021年4月から新しく保険薬局で算定できるようになった加算を解説しました。新型コロナウイルス感染症の流行は、まだまだおさまる気配を見せていません。感染対策にはコストもかかりますが、これらの加算をしっかりと理解して算定し、適切な対策を続けていけるようにしましょう。
1) 新型コロナウイルス感染症に係る診療報酬上の臨時的な取扱いについて(その35)
(令和3年2月 26 日 )https://www.mhlw.go.jp/content/000746419.pdf
2) 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き・第4版
https://www.mhlw.go.jp/content/000712473.pdf
3) 新型コロナウイルス感染症への対応と その影響等を踏まえた 診療報酬上の取扱いについて
https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/000706834.pdf
4) 新型コロナウイルス感染症に係る診療報酬上の臨時的な取扱いについて(その31) 令和2年12月15日
https://www.mhlw.go.jp/content/000705761.pdf
5) 令和3年度介護報酬改定における 改定事項について
https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/000753777.pdf