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薬剤師の気になるトピックをお届け!今月の特集

更新日: 2021年3月31日 児島 悠史

“デマ”が広まる要因を知っておこう|知っておきたい、医療従事者のSNSリテラシー3

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SNSは、今の情報化社会において個人にとっても組織にとっても必要不可欠なツールとなっています。情報の収集や発信、セルフブランディング、仲間との交流・・・様々な場面でとても役立つSNSですが、その一方でリテラシーを欠いた医療者のSNS上の発言が炎上騒動につながることも少なくありません。
第3回目の本稿では、非常時や災害時などに“デマ”が広まる要因や背景を知り、自分がその拡散に加担しないだけでなく、拡散されるデマに対抗する方法も身につけておきましょう。

“デマ”の多くは、正義感や役に立ちたいという善意によって拡散される

SNSは素早い情報収集・発信に長けたツールです。しかし、その一方で情報の真偽を見極めることは難しく、間違った情報、意図的に歪められた情報も頻繁に出回ります。昨今の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関しても、日本で流行し始めた2020年2月頃から現在まで、病気に関するもの、感染源に関するもの、治療薬に関するもの、ワクチンに関する者、実に様々な“デマ”がSNS上を飛び交っています。

ここで注意したいのは、“デマ”には明らかに業務妨害を目的にしたものも含まれますが、全ての“デマ”が意図的に何かを攻撃・妨害するために発信されているわけではない、という点です。むしろ、どちらかと言えば「この情報を拡散しなければ」という正義感や、「少しでも役に立ちたい」という善意によって拡散されるケースが多い傾向にあります。

たとえば、2020年の春頃に、LINE等でこのような情報が回ってきたのを目にした人は多いのではないでしょか。

“コロナウイルスは26~27℃くらいの温度で死滅するので、お湯を飲めば予防できます!”
“コロナウイルスは熱に弱いので、36℃前後のお湯を飲んでおけば大丈夫!”

常識的に考えて、36℃未満の温度でウイルスが死滅するのであれば、36~37℃もある人間の体内でウイルスが増えるはずがありません。少し考えればわかるはずの“明らかなデマ”であるにもかかわらず、こうした情報は日本全国に拡散されました。こうした“デマ”は、何も「お湯」をたくさん販売しようと企むメーカーが目論んだものでも、冷たい水の販売を妨害しようとしたお湯メーカーの作戦でもありません。ただ純粋に、多くの人が「この有益な情報をもっとたくさんの人に知ってもらいたい!」という正義感や善意によって拡散を繰り返したことが要因です。

お湯を飲む程度のことであれば、実践したところで身体的な負担も経済的な負担もほとんど生じないため大きな問題にはなりませんが、これがたとえば何らかの薬であればどうでしょうか。全く根拠のない高額なサプリメントであればどうでしょうか。

薬剤師のような国家資格を看板に掲げたSNSアカウントがこうした“デマ”の拡散に加担してしまうと、「薬剤師の人が拡散しているのだから、きっと間違いないだろう」と、更にデマ拡散を加速させてしまうことになります。“デマ”は恐怖や怒りといった感情を刺激しやすく、更に一種の斬新さをまとっているため、正確な情報よりも広く拡散される傾向があります1)。災害時や非常時には、特に恐怖や怒りといった感情が増幅されているため、自分が拡散しようとする情報の真偽を冷静に確かめる力が求められます。

“デマ”に対抗する有力な手段の1つは、「公的機関の情報を拡散する」こと

では、SNSに何か“デマ”が流れてきた際には、どう対応するのが良いのでしょうか。先述の通り、多くの人は正義感や善意でその情報を拡散しているため、頭ごなしに否定されると、その“正義感や善意を否定された”と感じて強く反発します。そのため、拡散されているデマを“デマだ”と指摘して食い止めることは、非常に困難です。

では、拡散されていくデマに対して、黙って指をくわえて見ていれば良いのかというと、そういうわけでもありません。…

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児島 悠史
こじま ゆうし

薬剤師 / 薬学修士 / 日本薬剤師会JPALS CL6。
2011年に京都薬科大学大学院を修了後、薬局薬剤師として活動。
「誤解や偏見から生まれる悲劇を、正しい情報提供と教育によって防ぎたい」という理念のもと、ブログ「お薬Q&A~Fizz Drug Information」やTwitter「@Fizz_DI」を使って科学的根拠に基づいた医療情報の発信・共有を行うほか、大学や薬剤師会の研修会の講演、メディア出演・監修、雑誌の連載などにも携わる。
主な著書「薬局ですぐに役立つ薬の比較と使い分け100(羊土社)」、「OTC医薬品の比較の比較と使い分け(羊土社)」。

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