点鼻薬の今昔物語~粉になった理由、使う前に振る理由
錠剤、カプセル剤、散剤、液剤、テープ剤、注射剤のほか、点鼻薬、吸入薬、点眼薬……「薬」には色々な剤型があります。普段から何気なく扱っているその剤型にも、実は意外な歴史、意外な開発の経緯があります。
第2回のテーマは「点鼻薬」です。点鼻薬と言うと、まず思い浮かぶのは液体のお薬ですよね。花粉症に用いるステロイドの点鼻薬などでは、「使用前によく振りましょう」と患者さんによくお伝えしているかと思います。そんな一般的な点鼻薬とは少し異なる、特徴的な点鼻薬のお話しをしていきたいと思います。
リノコートパウダースプレー鼻用(ベクロメタゾン プロピオン酸エステル)
「リノコートパウダースプレー」はアレルギー性鼻炎に対して使用されます。冒頭でお話ししたような一般的な液体状の点鼻薬とは違って、粉体の点鼻薬です。なぜ粉体の点鼻薬なのでしょうか?その謎に迫ってみます。
「ベクロメタゾンプロピオン酸エステル(以下、BDP)」は、1964年に国内で局所用合成副腎皮質ホルモン剤として開発されました。1981年にフロンガスが用いられたアルデシン®、アルデシン®ミニ鼻用が承認発売されています1)。しかし、フロンガスは環境問題や鼻腔粘膜への刺激性が懸念されていたこともあり、製剤の改良が急務でした。
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