薬剤師の気になるトピックをお届け!今月の特集

更新日: 2021年9月2日 薬剤師コラム編集部

零売薬局の本質とは? 日本零売薬局協会理事長・服部雄太氏に直撃インタビュー!

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セルフメディケーションへの関心の高まりや保険財政の悪化を背景に、「零売薬局」が注目されつつあります。知っているようで知らない零売薬局とは? 現状と課題を、一般社団法人日本零売薬局協会理事長 服部雄太氏に伺いました。

「零売薬局」とは何か?

まず、「零売薬局」とは、どのような薬局ですか?

服部氏(以下、敬称略):医療用医薬品は、だいたい世に15000種類ぐらいあり、その中に「処方箋医薬品」と「処方箋医薬品以外の医薬品」という分類がございます。約15000種類のうち7000から7500種類が処方箋医薬品以外の医薬品といわれています。

この処方箋医薬品以外の医薬品が、「零売(れいばい)」の対象品目で、原則は処方箋での取り扱いとなる保険診療・保険調剤の品目ではありますが、一部の例外を除いて零売という行為が可能になっています。

こちらを対象にした医療サービスが「零売薬局」というもので、俗にいう“処方箋なしで病院の薬が買える薬局”というようなキャッチフレーズをうたっている薬局が全国的に多くみられます。

零売の法的な背景・根拠とは?

「零売薬局」の開局には、特別な許認可が必要ですか?

服部:零売のための特別な許認可は必要なく、都道府県のいわゆる「薬局」の免許だけでできます。保険薬局でなくてもできます。全国にはコンビニエンスストアよりも多く約6万店の薬局が存在しているといわれていますが、そのすべてでやろうと思えば可能です。

零売に関する法的な背景・根拠とは?

服部:零売(れいばい)とは古くから薬局間などで行われてきた行為ですが、平成26年(2019年)の通知にて改めて定めが示されています。

零売は、「零売(ぜろばい)」という、いわゆる小分けにして売るという意味の言葉から派生したもので、もともと薬局間で行われてきました。不動在庫や処方箋調剤にあたって在庫不足の場合に近隣の薬局から分割販売を受けたり、漢方薬局ではもともと零売というような手法を使って地域のみなさんとコミュニケーションをとっていたというような歴史がございます。

一方で近年、薬剤師判断で向精神薬や処方箋薬を販売してしまうといった不適切なケースが年間数件発生しており、厚生労働省としても基準・定義をつくっていかないと、ということで、2005年3月30日付通知で、処方箋医薬品以外の医療用医薬品についての処方箋なしでの販売いわゆる零売にあたっては「一般用医薬品では対応できないやむを得ない場合に、必要最小限の数量を販売する」といった原則と、「医療機関の受診勧奨」といった実施上のルールが示されました。

これに先立っては、改正薬事法において要指示医薬品と向精神薬など医療用医薬品全体の約3分の2が新たに処方箋医薬品とされ、零売対象からは除外されるなど零売指定医薬品の定義が行われています。

勘違いしてはいけないのは、2005年の通知は、これによって零売が「解禁」になったというようなポジティブなニュース(発信)ではなく、引き続き零売は認めるけど「ちゃんとやってください」というメッセージ性の強いものです。

処方箋ではなく会話から始まる医療サービスに

零売薬局の経営や、零売薬局協会設立など積極的に関わっておられます。零売を推進する目的は何でしょうか?

服部:おおきくふたつございまして、薬剤師の活躍機会の創造、そして地域のみなさんのセルフメディケーションの啓蒙ということです。

現在、スイッチOTCの活用など保険適用外でのセルフメディケーションの推進が叫ばれていますが、なかなか進んでいないという状況があります。市販薬がある医薬品でも引き続き病院処方される場合が多く、その総額は日本経済新聞の調べ※で2016年度で5000億円を超えるともいわれています。

※市販薬あるのに病院処方5000億円 医療費膨張の一因: 日本経済新聞

この課題の背景には、まだまだ医療業界における薬剤師の地位、信頼度の課題もあると考えています。

地域における調剤薬局の立ち位置は、医療機関の処方箋の受け皿としか認知されていません。薬剤師として多いクレームは、「医師から薬の副作用は聞いたので、あなたからの説明はいらない」「はやく薬をください。バスの時間に間に合わない」といったもの。患者さんにとって、医療行為はクリニックで終わっていて、薬局は単に処方箋で薬をもらう場所としてしか認識されていないのです。

医薬分業のなかで、全国に6万店くらい薬局を増やした先輩方の功績の後、新しい薬局の在り方として、これからの薬局経営者は薬剤師の地位をしっかり上げていくようにしていくべきなのではないかと考えています。

具体的には、軽度な健康課題は地域の薬局に頼っていただけるようになりたい。医療サービスのファーストコンタクトは「まず薬局」という動線づくりが、これから必要になってくるんじゃないかと思っているのです。

そのひとつのきっかけとして、零売というのが医療機関を介さずに、直接薬局にきてもらえる医療サービスになれるのではないか。「処方箋」からはじまるのではなく、「会話」から始まる医療サービスです。患者さんにしっかりコミュニケーションをとって、いわゆる昔の薬局のように地域のみなさんの健康を守っていくのが薬剤師であるべきだと思っています。

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薬剤師コラム編集部

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