薬剤師のための論文活用-情報の取捨選択と薬剤師の専門性(後編)
11月7日にオンライン開催された日本薬局学会のワークショップでは、新型コロナウイルス感染症に対するイベルメクチンの有効性を検討した以下の4つの論文をご紹介しました。
【論文①】イベルメクチンを服用していた人で、新型コロナウイルスの感染リスクが83%低下
▶コホート研究[Cureus. 2021 Aug 5;13(8):e16897PMID: 34513470]
【論文②】新型コロナウイルス感染症患者がイベルメクチンを服用すると、死亡リスクが79%低下
▶システマティックレビュー・メタ分析[Pharmacol Rep. 2021 Oct;73(5):1473-1479 PMID:33779964])
【論文③】新型コロナウイルス感染症患者がイベルメクチンを服用しても、死亡リスクは低下傾向にあるものの、統計的有意な差を認めない。
▶システマティックレビュー・メタ分析[Cochrane Database Syst Rev. 2021 Jul 28; 7(7): CD015017.PMID: 34318930])
【論文④】新型コロナウイルス感染症患者がイベルメクチンを服用しても、プラセボと比べて症状持続期間に、統計的有意な差を認めない
▶ランダム化比較試験[JAMA. 2021 Apr 13;325(14):1426-1435.PMID: 33662102]
そのうえで、ワークショップ参加者に「イベルメクチン、効果がありますか?」という質問をチャットで共有し、この質問に対してどの論文情報を活用して答えるか、薬剤師の立場だった場合と、テレビのプロデューサーの立場だった場合で回答してもらいました。その結果はどのようなものだったのでしょう。
重視する論文情報は立場や文脈によって大きく異なる!
ワークショップの参加者は753人で、このうち287人から回答が得られました。論文の活用は、薬剤師の立場であった場合は④が最も多く(59%)、次いで③(29%)でした【図1】。一方、テレビのプロデューサーの立場であった場合は①が最も多く(65%)、次いで②(29%)となりました【図2】。
…