患者対応に役立つ、今押さえておきたい新型コロナウイルスに関するTIPs1
2022年が始まり、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)との闘いもとうとう3年目に突入しましたが、2021年終盤からは「オミクロン株」の登場によって、またその戦況は大きく変わりつつあります。そこで今回は、この第6波を乗り越える際の患者対応に役立ちそうな情報を紹介します。
オミクロン株は重症化しにくい?
- 「オミクロン株」は、重症化しにくいって本当ですか?
- 「デルタ株」に比べると確かにそういう傾向はありそうだが、“重症化しない”わけでもなければ、“軽症であればただの風邪くらいで済む”わけでもないという点には注意
(参考になるデータ)
注意すべきポイント
いま世界的に流行している「オミクロン株(Omicron VOC-21NOV-01(B.1.1.529))」の特徴については、まだ豊富なデータがあるわけではありませんが、たとえば2021年末にイギリス保健安全保障庁(UK Health Security Agency)が公開したデータが、その輪郭をつかむのに役立ちます。
これによると、「オミクロン株」は「デルタ株」に比べて救急搬送や入院のリスクは3分の1から半分程度であると評価されています(☞p.8:Risk of hospitalisation in Englandを参照)。これはワクチン接種をしていない人でも同様で、確かに“重症化しにくくなっている”という面は観察されているようです。
ただし、この情報を扱う上では3点、注意したいところがあります。
1 重症化しにくい≠重症化しない
まず1つめは、この重症化リスクの低下には、世界で大きく進んだワクチン接種(2回)の効果が影響している可能性がある、ということです。実際、ワクチンを接種していない人にとっては、重症化リスクは下がっていたとしても20~25%程度1)だというデータもあり、ウイルス自体の病原性はそこまで変わっていない可能性があります。
2つめは、“重症化しにくい”は“重症化しない”とは異なる、という点です。そもそも、入院などのリスクはゼロになったわけではなく、かなり重症化リスクの高かった「デルタ株」に比べて弱まった、という話です。現在のところ、確かに持病のない若い人でも大半がどんどん重症化していくような感染症ではありませんが、かといって、発症した際に“重症化しない”ことの保障はどこにもありません。それに、重症化リスクがたとえ半分になっても、感染者が2倍に増えれば重症者の数は同じになり、同じだけ医療資源を消耗・圧迫することになります。