薬剤師のライフプランから考える薬局の独立開業
今回の特集では、薬剤師が歩む多くのキャリアの中から、薬局の独立開業を紹介します。私が実際に薬局開業を目指して経験した内容を含めて、どのような方法があり、どんな知識やスキルが必要なのかをお伝えします。
薬剤師国家試験に合格し、薬学部を卒業した後に続く長い薬剤師人生について皆さんはどのようなライフプランを考えていますか?薬剤師として就職したとしても、職場の雰囲気が合わない、給与や待遇などの条件面で自分の理想とギャップがうまれてきた、などの理由で転職を考える機会もあると思います。
しかし、転職は働く『場所』を変えるだけで『働き方』そのものを変えるわけではありません。今回の特集では、その『働き方』に注目して、薬剤師のワークライフバランスを考えながら、自身で薬局を独立開業するというプランとその方法について、私の体験をお伝えしながらご紹介します。
薬局開業のメリットとデメリット
まずはじめに、薬局開業のメリットとデメリットについて、一般的な意見を解説します。最大のメリットとして挙げられるのが、仕事の方針や目標を自ら決定できるという点です。自分自身の生活や年齢に合わせたワークライフバランスを実現することが可能です。人間関係のストレスや経営方針に対する不満などからも開放されます。
また、収入面においても大幅な増加が期待できます。各薬局の状況にもよりますが、経営が軌道に乗ると平均年収は1,000万円以上といわれており、さらに複数店舗を経営することで年収1,500万円を超えることもあります。
経営者になることで人脈が広がることもメリットのひとつです。開業にあたって、銀行や税理士、医薬品卸と深く関わることになります。人脈作りは独立の成功への重要なポイントでもあり、薬局を経営するうえでも大きな武器といえるでしょう。
もちろん、薬局開業にはデメリットもあります。収入の増加が期待できる点がメリットである反面、被雇用者の時よりも収入が減少するリスクも考慮しなければなりません。収入の安定が保証されていないため、患者さんが来ないなど経営状況によっては収入がゼロになる可能性も。
このほかにも、施設や設備の管理、従業員のマネジメントなど経営上のリスクは様々あります。薬局開業の失敗を防ぐためにも、こうしたリスクを把握し対策を準備しておくことが大切です。
薬剤師の活躍する場所と働き方
薬剤師として活躍する職場は皆さんもご存知の通り多種多様です。薬剤師の中でも働く割合の多い調剤薬局・ドラッグストア(58%)をはじめ、病院・診療所などの医療機関(19%)、製薬会社、官公庁など他にもまだまだたくさんあります2)。
このように薬剤師の働き場所は多岐に渡りますが、これらの職場には共通していることがあります。それは労使関係において『労』、つまり労働者であるということです。労働者とは、組織に属することで、組織の一員として仕事をするということです。
この『労』とは反対に『使』、経営者側として活躍する方法もあります。自らが組織の代表となり、自分自身の判断や責任において仕事をこなす働き方です。
自身で会社を作り、独立するというライフプランを考えている薬剤師はごく少数であると感じています。私は薬局経営及びコンサルタント業務の中で日々多くの薬剤師と面談しますが、将来のプランとして薬局の独立開業を考えている薬剤師は10%未満しかいません。さらに、その10%の中で独立を実現するために何か行動を起こしている薬剤師は1%未満となってしまいます。