ちょっと注意が必要な薬の調剤・服薬指導①~『サムスカ』の処方が来たら
『サムスカ』の処方が来たら…?
2010年10月に登場したトルバプタン製剤である『サムスカ』は、抗利尿ホルモンであるバソプレシンの受容体に拮抗する薬です。ループ利尿薬やサイアザイド利尿薬とは違い、電解質の排泄を伴わずに過剰な水だけを排泄する「水利尿薬」を目指して開発された薬で、現在は他の利尿薬では十分な効果が得られない体液貯留の改善などに用いられています。
通常、これら体液貯留の改善に用いる場合は1日1回7.5~15mg程度の用量で使うので、『サムスカOD錠7.5mg』や『サムスカOD錠15mg錠』といった錠剤を扱う機会は多いと思います。ところが、この薬には実は1日2回の用法があったり、もっと高用量の『サムスカOD錠30mg』という規格も存在するのです。これを見て、ただ「ちょっと違う用法や高用量で使うこともあるんだなぁ」と思うだけでは、非常にまずいです。1日1回と1日2回の用法、あるいは7.5mgや15mgの製剤と30mgの製剤ではそもそも効能が異なるからです。
※サムスカの効能
OD錠7.5mg、 顆粒1% |
OD錠15mg | OD錠30mg | |
心不全による体液貯留 (1日1回) |
〇 | 〇 | - |
肝硬変による体液貯留 (1日1回) |
〇 | - | - |
SIADHによる低Na血症 (1日1回) |
〇 | 〇 | 〇 |
常染色体優性多発性のう胞腎 (1日2回) |
〇 | 〇 | 〇 |
…つまり、『サムスカ』が1日2回で処方されていたり、あるいは30mg錠を使った高用量で処方されていたりした場合は、「抗利尿ホルモン不適合分泌症候群((Syndrome of Inappropriate Secretion of Antidiuretic Hormone: SIADH)」や「常染色体優性多発性嚢胞腎(Autosomal Dominant Polycystic Kidney Disease:ADPKD)」の治療を目的に処方されている可能性がある、ということにまずは気付かないといけない、ということです。