「薬剤師×〇〇」を改めて考える.1~本業の薬剤師への意識は?
先日、経営者が自身のキャリアやビジョンを薬学生や若手の薬剤師たちに向けて伝えるイベントに登壇しました。学生の中にはまだ3年生の方もいて、早い段階から将来に対する意識が高く感心させられるばかりでした。
日頃も、「起業したい」「副業したい」「新しいことをしたい」といった野心的な目標を持った薬学生や若手薬剤師を紹介され、色々とお話をすることもありますが、そんな皆さんに共通して、”勉強や本業もある中、将来をのことを考えて努力している”人が多いなという印象を受けます。
ただ、そこでいつも感じるのは、「そもそもの薬剤師としての本業については、どう考えているんだろう?」という疑問です。
薬剤師×◯◯の「薬剤師」は1より大きい数字なのか?
“薬剤師×◯◯”
…このような言葉を、色々な場面で見かけるようになりました。就職活動のイベントでもらう名刺やSNSのプロフィール欄などにも書いてあることがあります。例えば薬剤師免許を持つ薬剤師であることに加えて、他に美容関係の仕事をしている場合に「薬剤師×美容」と表記するなどして、自分の興味・関心の分野や自分の取り組みをわかりやすく表現するのに用いられている考え方のようです。
薬剤師は医療従事者でありながら、在宅医療に携わる中で患者さん宅を訪れて様々な支援を行ったり、ドラッグストアで日用品を販売したりと、”薬学以外の知識や技術”が必要になる場面も確かに多いです。そのため、美容や食事など様々な個性や特技を活かして活躍する薬剤師が増えれば、きっと患者さんにも新たな価値を提供できるようになるはずです。こうした方向性に関しては、大いに賛同の立場をとりたいところです。
一方で、この考え方には”危うさ”を感じる部分もあります。たとえば、薬剤師に何かを”かけ算”するのであれば、かけられる”薬剤師”の部分が「1」以上になっている、つまり一人前であることが大前提です。でなければ、かけ算をすると数字は「1」を下回って、どんどん小さくなっていってしまうからです。
つまり、薬剤師として”1人前以上”でないと、その後にどんなものをかけても”相乗効果”による付加価値は生まれない、ということになります。これは言葉遊びのようなものですが、薬剤師に何かを掛け合わせるのであれば「薬剤師が土台になる」ことは間違いないので、その土台がぐらついていると良いものはできません。