「軽度認知障害」の相談に、薬局でも対応しよう~1.軽度認知障害とは?
お正月の帰省で久しぶりに高齢の親族と会ったとき、「物忘れ」が話題になることはよくあります。一般的に、歳をとればだれでも「物忘れ」くらいはするようになりますが、どこまでが加齢による普通の「物忘れ」で、どこからが病的な「物忘れ」なのか、その区別は非常に難しいのが実情です。そのため、「加齢によるものだと思っていたら認知症だった」とか、あるいは逆に「認知症だと思って心配していたら、ただの物忘れだった」、といったケースも珍しくありません。
特に、最近は「軽度認知障害」という言葉もよく耳にするようになり、「物忘れ」に対する市民の意識は高くなっています。そこで今回は、この「軽度認知障害」について何か薬局で相談された際にも困らないよう、その基本をおさらいしておきたいと思います。
軽度認知障害とは~認知症との違いは?
「軽度認知障害(MCI:Mild Cognitive Impairment)」とは、簡単に言うと“物忘れなどの認知機能の低下は見られるが、日常生活への影響はなく認知症とは診断できないものの、正常とも言えない状態”のこと、つまり「認知症」と「健常な状態」の間にあるグレーゾーンの段階を指します。
どこまでが「軽度認知障害」で、どこからが「認知症」なのか、という明確な線引きは難しいのが実情です。これにはいくつか理由がありますが、たとえば「軽度認知障害」の診断基準にはいくつか種類があり(例:DSM-5、ICD-10、NIA-AAなど)、それぞれ内容に少しずつ差がある1)、というのが挙げられます。
ただ、いずれの診断基準においても“日常生活を阻害しない”という点が共通した要素になっているため、認知機能の低下によって現れる症状が日常生活を阻害しているかどうかが、「軽度認知障害」と「認知症」を分けるポイントの1つと言えます。