「軽度認知障害」の相談に、薬局でも対応しよう~3.軽度認知障害にはどんな対策が有効?
「軽度認知障害」と言われたからといって、全員がそのまますぐに日常生活に支障を来たすような「認知症」の段階にまで進んでいってしまうわけではありません。むしろ正常範囲まで戻るケースもたくさんある、ということを前回(「軽度認知障害」の相談に、薬局でも対応しよう~2.軽度認知障害は認知症に進行する?)の記事で紹介しました。しかし、こうした説明をされると、次に「何をすれば進行しない、正常範囲まで戻るのか?」が気になるのが人間です。
今回は、薬局で具体的にどんな取り組みが紹介できるのか、実際に有用性が報告されているものをいくつか紹介します。
「軽度認知障害」に、「認知症の薬」は効く?
よくあるのが、「認知症の進行を抑える薬を「軽度認知障害」のうちから飲んでおけば、認知症への進行を防げるのではないか?」という期待です。 確かに、「コリンエステラーゼ阻害薬」や「MNDA受容体拮抗薬」といった認知症の薬は認知症の進行抑制に一定の効果がある1)ため、理論上は期待できそうに思えます。しかし、実際にはほとんどメリットは無さそうで、たとえば「ドネペジル」を「軽度認知障害」の人が使ってもほとんど効果は得られない2)ことがわかっています。
難しいのは、薬学的なメリットは観察されていないものの、“薬を飲んでいる”ということが患者さんの主観的な安心に繋がる可能性はある3)、という点です。こうした“プラセボ効果”が重要な意味を持つような患者さんの場合、使ってはいけないとまでは言えないのかもしれません。ただ、「ドネペジル」などのコリンエステラーゼ阻害薬は下痢や吐き気などの副作用も起こりやすい4)ため、安易に使うのはできるだけ避けたい選択でもあります。
※てんかんを伴う軽度認知障害に「ラモギトリン」や「レベチラセタム」などの抗てんかん薬が有効な可能性がある5)など、特殊なケースもあります。