水剤のメスアップには、水道水・精製水・単シロップのどれを使うのが良い?
「水剤」や「シロップ剤」の調剤は、新人薬剤師の最初のタスクとしても任せることの多い仕事です。しかし、それは“失敗しても問題ないから”という理由によるものではありません。正確な調剤ができなければ、治療の失敗や副作用リスクの増加だけでなく、保管や服薬上の問題も生じてしまうのが、「水剤」や「シロップ剤」の調剤です。ただ、いざ新人に教えようと思った際に“正確な調剤”が何なのか、自分の手技が本当に正しいのかどうかがわからなくなってしまう人は少なくありません。
そこで今回は、この「水剤」や「シロップ剤」の調剤において、意外とややこしくてピットホールになりがちな部分「メスアップ」について、改めて復習しておきましょう。
「メスアップ」とは
通常、「水剤」は錠剤やカプセル剤のように1回分ごとに粒が分かれているわけではないため、1回量を“目盛り”か“計量カップ”で確認しながら服用する必要があります。しかしこの際、1回量が綺麗に割り切れないと、“目盛り”や“計量カップ”で適切な量をはかりとることができないため、「メスアップ」によってわかりやすい量にまで容積を増やす場合があります。この「メスアップ」の作業には、いくつか注意したいポイントがあります。
POINT①:「メスアップ」すると“服用しなければならない薬液の量”は増える
まず押さえておきたいのが、この「メスアップ」は正確な量を計量するために重要なものである一方、薬が水や単シロップによってかさ増しされることによって、実際に“服用しなければならない薬液の量”は増えてしまう、という点です。たとえ甘いシロップ剤であっても、子どもにとって薬は好ましいものではありませんので、できるだけ“少ない量”で済ませられるに越したことはありません。「計量する際にわかりやすいこと」と「なるべく少ない服用量で済ませられること」を両立させられるよう、メスアップは可能な限り最少量で行い、1回量があまり大きく増えないように配慮することが重要です。
水薬瓶などには、元から12分割の線、15分割の線、21分割の線など色々な目盛りが記載されていることがありますが、いま調剤している薬の量と用法から、この目盛りのどれを使えば最少量のメスアップが可能かを考えることの意義については、新人薬剤師にもしっかりと説明を行いましょう。