薬剤師の気になるトピックをお届け!今月の特集

更新日: 2023年3月18日 児島 悠史

水剤のメスアップに「水道水」を使って良い?~「常水」の定義とその注意点

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「水剤」をメスアップする際には、「水(常水・精製水・注射用水)」や「単シロップ」が用いられますが、ここに「水道水」は含まれるのでしょうか。「水道水でもOK」、「水道水は避けた方が良い」、いろいろな意見を耳にすると思いますが、まずは原則・定義はどうなっているのか、水道水を用いることに具体的にどのようなデメリットがあるのか、個人的な好き嫌いや“これまでそうしてきたから”といった経験則を抜きにして考えることが大切です。

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POINT①:「水道水」を使うことの是非~「常水」の定義

メスアップに「水道水」を使って良いかどうかを考える際には、まずメスアップに用いられる「常水」とは何を意味するのか、その定義を確認するところから始める必要があります。この「常水」に「水道水」が含まれれば可、含まれないのであれば不可、というのがまず大原則になるからです。

現在の日本薬局方では、「常水」とは“水道法第4条に基づく水質基準に適合するもの”と定義されていますが、この水道法第4条とは、以下のようなものです。

※水道法第4条(水質基準)
水道により供給される水は、次の各号に掲げる要件を備えるものでなければならない。
一 病原生物に汚染され、又は病原生物に汚染されたことを疑わせるような生物若しくは物質を含むものでないこと。
二 シアン、水銀その他の有毒物質を含まないこと。
三 銅、鉄、弗ふつ素、フェノールその他の物質をその許容量をこえて含まないこと。
四 異常な酸性又はアルカリ性を呈しないこと。
五 異常な臭味がないこと。ただし、消毒による臭味を除く。
六 外観は、ほとんど無色透明であること。

・・・日本の水道水はこの水質基準に適合していなければならないため、日本の水道水は自動的に日本薬局方の「常水」に該当することになります。つまり、メスアップに「水道水(=常水)」を用いても、基本的には問題ない、ということになります。

なお、2000年より以前の日本薬局方では、「常水」の定義に「水道水および井水」と記載されている時代もありましたが、これが改定された際に「水道水ではダメになった」という勘違いが多発したようです。

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児島 悠史
こじま ゆうし

薬剤師 / 薬学修士 / 日本薬剤師会JPALS CL6。
2011年に京都薬科大学大学院を修了後、薬局薬剤師として活動。
「誤解や偏見から生まれる悲劇を、正しい情報提供と教育によって防ぎたい」という理念のもと、ブログ「お薬Q&A~Fizz Drug Information」やTwitter「@Fizz_DI」を使って科学的根拠に基づいた医療情報の発信・共有を行うほか、大学や薬剤師会の研修会の講演、メディア出演・監修、雑誌の連載などにも携わる。
主な著書「薬局ですぐに役立つ薬の比較と使い分け100(羊土社)」、「OTC医薬品の比較の比較と使い分け(羊土社)」。

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