薬の保管環境が「高温」であることに気づくきっかけを、服薬指導の中で探そう
前回の記事で、医薬品が「高温」に曝されやすい環境として「台所」「カバン」「車」を紹介しました。これらの環境が不適切と感じていない患者さんは、ずっとその保管を続けてしまうことになりますが、こうした不適切な薬の保管の影響は、必ずしも無視できるような小さなものに留まるとは限りません。
そこで今回は、薬の保管環境が「高温」になってしまっていることに、患者さん自身も気づくことができるような“小さな変化”や“きっかけ”を紹介します。もし服薬指導の際に以下のような話を聞けたら、薬の保管環境について改めて注意喚起をしてみてください。
CHECK①「軟カプセル剤」がくっつく、PTPシートや瓶から出しにくい
「アルファロールカプセル」や「エディロールカプセル」「ロカルトロールカプセル」「アボルブカプセル」などは、カプセル剤の中でも「軟カプセル剤」に分類される剤型です。「軟カプセル剤」は、特に油脂分の多い液状の有効成分を製剤化するのに適した剤型として重宝されています。
この「軟カプセル」は主にゼラチンで作られているため、熱には弱い性質(※ゼリーが熱で溶けるのと同じ)を持っています。そのため、高温に曝され続けると、カプセルが溶けてPTPシートや瓶などに付着して取り出せなくなるなどのトラブルの原因になります。特に、「一包化」を行っている場合には“湿度”の影響も受けて、よりべたつき・付着しやすくなります。
「軟カプセル」の薬を“取り出しにくい”と訴えられた際は、製剤が小さいこと、手先が不自由なことなどの理由を真っ先に考えがちですが、「高温に曝されて軟カプセルが付着している」という可能性も考慮するようにしてください。
▲左は通常のカプセル剤である「ネキシウムカプセル」、右は軟カプセル剤である「エディロールカプセル」の組成と性状(各添付文書より)。内容物が油脂性の液状であることのほか、カプセルの主体が「ゼラチン」であること、剤型が「軟カプセル」と明記されていることなどから、区別することができる。