「熱中症」は、“暑い日に屋外で労働・スポーツをしているとき”にしか起こらない?
日本では、年間40万人近くの人が熱中症に関連した症状で医療機関を受診していますが、その大半は6~9月の夏季に起こっています。軽症でその日のうちに帰宅できるケースも多いですが、全体の8.7%が入院、0.13%が死亡という転帰をたどっているなど、場合によっては生命に関わるものです。特に、全症例の半分近く、死亡例の9割近くを65歳以上が占めている1)など、高齢者にとっては非常にハイリスクです。
高齢者は、基礎疾患があったり、“暑さ”に気づきにくかったり、汗をかきにくく体温調節機能が衰えていたり、エアコンを我慢しがちだったり2)と、熱中症を起こしやすいリスク要因を多く抱えていますが、中でも「熱中症というものを誤解している」ために、対策も間違えてしまっているケースもよくあります。そこで、本稿では薬剤師が急所を押さえた注意喚起をできるよう、高齢者がよく誤解しているポイントを紹介します。
よくある誤解1: 「家の中では熱中症にならない?」
「熱中症」は、“暑い日の屋外“に、”肉体労働やスポーツをしているとき“にしか起こらない、と考えている人はかなり多いようです。しかし、軽症~中等症の熱中症で東京の医療機関を受診した人を対象にした2016年の調査では、熱中症の発症場所として「屋外労働」は11.0%、「スポーツ中」は12.2%と、そこまで多くを占めるわけではありません。むしろ、最も多くを占めるのは「日常生活中」の48.8%、次いで多いのが「電車内」の18.3%と報告されており3)、屋外でもなければ、激しい活動中でもない状況で熱中症の7割近くが起こっています。つまり、「屋内」で「特に激しい活動をしていない状況」であっても熱中症は十分に起こり得る、という点は押さえておく必要があります。
(文献3より)