「経口補水液」と「スポーツドリンク」は何が違う?~成分と法律の違いを意識した運用
夏も本番を迎え、熱中症や脱水対策の注意喚起が盛んに行われるようになってきました。そんな中で、水分や電解質の補給は熱中症や脱水を防ぐための重要なポイントになりますが、「経口補水液」と「スポーツドリンク」は具体的に何が違って、どのように使い分ければ良いのか、基本的なポイントを押さえておきましょう。
成分の違い: 「スポーツドリンク」は糖分が多めである点に注意
前回の記事でも紹介した通り、通常、熱中症や脱水の対策には「経口補水液」と「スポーツドリンク」のどちらを用いても良いとされています1)。これは、「経口補水液」でも「スポーツドリンク」でも、基本的には水と電解質の両方(に加えて糖分)をバランスよく補給できると考えられるからです。
実際、世界保健機関(WHO)は「経口補水液」の組成2)を公開していますが、およそ市販されている「経口補水液」や「スポーツドリンク」は、だいたいこの基準に近い組成3)になっています。
※代表的な経口補水液とスポーツドリンクの組成
WHOの製剤(2002) (経口補水液) |
OS-1 (経口補水液) |
ポカリスエット (スポーツドリンク) |
|
Na(ナトリウム) | 75 mEq/L | 50 mEq/L | 21 mEq/L |
ブドウ糖 | 1.35% | 2.5% | 約6.0~7.0% |
総浸透圧 | 245 mOsm/L | 270 mOsm/L | 約320 mOsm/L |
ただし、ブドウ糖の吸収効率は1.0~2.5%程度が最も良いとされている4)ことを踏まえると、「経口補水液」のブドウ糖濃度はこの範囲内に収まっていますが、「スポーツドリンク」では電解質に比べて糖分が超過傾向にあります1)。そのため、「スポーツドリンク」は“美味しく飲む”のには適していますが、あまり飲み過ぎると糖分が過剰になってしまうデメリットがあります。糖尿病を患っていたり、カロリー制限をしていたりする人の場合は特に注意が必要です。