薬剤師の気になるトピックをお届け!今月の特集

更新日: 2023年9月20日 児島 悠史

意外なドーピングの禁止薬物1~「尿酸排泄促進薬」が禁止されている理由

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たとえばステロイドが「ドーピング」の禁止薬物であることは有名ですが、他にも身近な薬がドーピングの禁止薬物に指定されているケースはよくあります。あまり“ドーピングっぽくない薬”でも、うっかり禁止薬物を使ってしまえば、患者さんは選手生命に関わるような処分を受けてしまう可能性もあるため、対応する薬剤師としては「知らなかった」では済まされません。今回は、そんな落とし穴になり得る“意外なドーピング禁止薬物”をいくつか具体的に紹介します。前編では、あまり「ドーピング」とは関係なさそうな、痛風・高尿酸血症の治療薬がテーマです。

痛風・高尿酸血症の治療薬のうち、“禁止薬物”に該当するものはどれ?

  • アロプリノール
  • フェブキソスタット
  • ベンズブロマロン
  • プロベネシド

答え 表示

「プロベネシド」は、なぜ禁止薬物に該当するのか?~AASとの相互作用

ドーピングの禁止薬物と言えば、“筋肉の増強”や“心拍数の抑制”といった作用を持つ薬剤が有名ですが、世界アンチ・ドーピング機構(WADA)の定義では、禁止薬物はこれらの作用を持つ薬剤に限りません。たとえば、「“筋肉の増強”などを目的に薬物を使用した痕跡を消す」という、証拠隠滅のために用いられる薬もまた禁止薬物の指定を受けています。それが、この「S5.利尿薬および隠蔽薬」の分類です。

「プロベネシド」も、これ自体が特に筋肉や心臓に対する作用を持つものではありません。しかし、もともと「ペニシリン」の血中濃度維持に利用されていた(※今も用法及び用量に残っている)ことからもわかるように、体内の様々な物質の排泄に影響する作用があります。

意外なドーピングの禁止薬物1~「尿酸排泄促進薬」が禁止されている理由の画像1

▲プロベネシド製剤である「ベネシッド錠」の添付文書

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児島 悠史
こじま ゆうし

薬剤師 / 薬学修士 / 日本薬剤師会JPALS CL6。
2011年に京都薬科大学大学院を修了後、薬局薬剤師として活動。
「誤解や偏見から生まれる悲劇を、正しい情報提供と教育によって防ぎたい」という理念のもと、ブログ「お薬Q&A~Fizz Drug Information」やTwitter「@Fizz_DI」を使って科学的根拠に基づいた医療情報の発信・共有を行うほか、大学や薬剤師会の研修会の講演、メディア出演・監修、雑誌の連載などにも携わる。
主な著書「薬局ですぐに役立つ薬の比較と使い分け100(羊土社)」、「OTC医薬品の比較の比較と使い分け(羊土社)」。

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