薬剤師の気になるトピックをお届け!今月の特集

更新日: 2023年9月22日 児島 悠史

意外なドーピングの禁止薬物2~「β遮断薬」が禁止されている理由

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前回の記事で、高尿酸血症・痛風の薬が「ドーピング」の禁止薬物に該当する、という少し意外なケースを、その理由や背景とともに紹介しました。こうした“ドーピングっぽくない薬”は、意図しない違反にも繋がりかねないため注意が必要ですが、こうした例は他にも色々あります。今回は、ドーピング禁止薬物として有名な「β刺激薬」とは逆の作用を持つ「β遮断薬」がテーマです。

β遮断薬は、どの競技種目の際に禁止薬物になる?

  • マラソン
  • 柔道、レスリング
  • アーチェリー
  • ヨット
  • スキージャンプ

答え 表示

「β遮断薬」は、なぜ禁止薬物に該当するのか?~薬理作用と実際のパフォーマンスへの影響

「β遮断薬」は主に高血圧や不整脈・狭心症の治療に用いられる薬ですが、他にも“身体の震え”を抑える作用があるため本態性振戦の第一選択薬2)に選ばれていたり、あるいは心拍数を抑える作用が気持ちを落ち着かせることにも繋がることから、社交不安障害(あがり症)などに対しても用いられたり3)と、意外と幅広い使われ方をする薬です(注意:「あがり症」に関するエビデンスは微妙なところがあります)。

そのため、こうした作用が有利になるような競技・・・・・・具体的には射撃・アーチェリー・ゴルフといった“手先の細かな動揺を抑えて標的を狙う競技”や、自動車・スキー/スノーボードといった“恐怖心に打ち克つことが重要な勝因になる競技”では、ドーピングに該当するとして禁止薬物に指定されています1)。実際に「β遮断薬」は、ピストル競技では“手の震え”を抑制することによって射撃性能が向上する4)、あるいはスキージャンプ競技では、飛翔時の“心拍数”の急激な増加を抑制することによって成績が向上する5)、などといった報告もあり、その影響は理論上の推論に留まらないと考えられています。これが、「β遮断薬」がドーピングの禁止薬物に指定されている主な理由です。

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児島 悠史
こじま ゆうし

薬剤師 / 薬学修士 / 日本薬剤師会JPALS CL6。
2011年に京都薬科大学大学院を修了後、薬局薬剤師として活動。
「誤解や偏見から生まれる悲劇を、正しい情報提供と教育によって防ぎたい」という理念のもと、ブログ「お薬Q&A~Fizz Drug Information」やTwitter「@Fizz_DI」を使って科学的根拠に基づいた医療情報の発信・共有を行うほか、大学や薬剤師会の研修会の講演、メディア出演・監修、雑誌の連載などにも携わる。
主な著書「薬局ですぐに役立つ薬の比較と使い分け100(羊土社)」、「OTC医薬品の比較の比較と使い分け(羊土社)」。
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