新型コロナの抗ウイルス薬、薬価が高くなった理由~新薬の値段を決める3つの方式
前回の記事で、新型コロナウイルス感染症の「抗ウイルス薬」は、1回の治療にかかる薬代だけで5~10万円になることを紹介しました。季節性インフルエンザの「抗ウイルス薬」では、先発医薬品を用いても2,500~5,000円程度で収まることを踏まえると、非常に高額になものになっています。なぜこんな高額になっているのか、その理由を見ていきたいと思います。
新薬の値段の決め方と、新型コロナの薬で採用された方式
新薬の値段は、既に類似薬が世の中にあるかどうか、新規性があるかどうか、という視点から、基本的に以下の3方式のいずれかで決められます。
①「類似薬効比較方式(Ⅰ)」:類似薬とは異なる新規性、既存薬を上回る有効性や安全性が示されている場合。
⇒新薬の1日薬価を、既存の類似薬の1日薬価に合わせ、有用性によって補正加算を行う
②「類似薬効比較方式(Ⅱ)」:類似薬と比べて新規性は乏しいと判断された場合
⇒過去数年間の類似薬の薬価のうち、最も安い1日薬価に合わせる
③「原価計算方式」:類似薬が世の中に存在しない場合
⇒原材料費や販売管理費、流通経費などをベースに、有用性によって補正加算を行う
(※さらに、海外での薬価などを踏まえて色々と調整されます)
厚生労働省の資料を見ると、新型コロナウイルス感染症の治療薬『ラゲブリオ』・『パキロビッド』・『ゾコーバ』は、いずれも①「類似薬効比較方式(Ⅰ)」で決められている1,2)ことが確認できますの。つまり、これらの薬の値段には、「既存の類似薬」の値段が非常に大きく影響することになります。では、それぞれどの薬を「既存の類似薬」として算定されたのかを見てみます。