薬剤師の気になるトピックをお届け!今月の特集

更新日: 2023年11月2日 児島 悠史

インフルエンザの治療薬、どのくらい効く?~有症状期間を短くする効果と重症化を防ぐ効果

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インフルエンザは、ウイルスによる感染症という点では通常の“風邪”と同じですが、38℃以上の高熱や全身の強い倦怠感・筋肉痛といった強めの症状が現れやすく、また重症化や合併症のリスクもあるため、ただの風邪よりも厄介な感染症と言えます。そのため、ワクチン接種(No.1,2)などの対策が推奨されているほか、発症した場合は感染拡大を防ぐために「出席停止」などの対応がとられています。

ただ、風邪と違ってこのインフルエンザには「抗ウイルス薬」が存在するため、発症した際にも薬物治療を行うことができます。しかし、この「抗ウイルス薬」は、飲めばたちまちインフルエンザが治るとか、これさえ飲んでいれば重症化しなくなるとかいったような薬ではありません。

5種の「抗ウイルス薬」の違い

インフルエンザの治療に用いられる「抗ウイルス薬」には、4種の「ノイラミニダーゼ阻害薬」と1種の「キャップ依存性エンドヌクレアーゼ阻害薬」があります。これらの薬に期待できる臨床的な効果については、特に明確な使い分けが必要なほどの目立った違いは確認されていません1,2)。そのため、内服・吸入・点滴という投与経路の違い、5日間投与か単回投与かといった用法の違いなど、薬を使う患者さんの状況や希望等に応じて、臨機応変な使い分けが行われているのが一般的です。

分類 一般名 先発医薬品 基本的な使い方
ノイラミニダーゼ阻害薬 オセルタミビル タミフル 内服、1日2回を5日間
ザナミビル リレンザ 吸入、1日2回を5日間
ラニナミビル イナビル 吸入、1回
ペラミビル ラピアクタ 点滴、1回
キャップ依存性エンドヌクレアーゼ阻害薬 バロキサビル ゾフルーザ 内服、1回

※日本で用いられているインフルエンザの「抗ウイルス薬」

ただし、強いて言えば、最も使用実績が豊富な「オセルタミビル」はガイドライン等でも推奨度が高く位置付けられていることが多い、「ザナミビル」はB型インフルエンザに対して他剤よりもやや優れる可能性が示唆されている3)、「ラニナミビル」は日本でしか使われていない4)ため有効性や安全性のデータに乏しい、「バロキサビル」は値段や耐性化の問題から非推奨としている専門機関がある5)など、その扱いにはやや温度差もあります。

有症状期間を短くする効果

インフルエンザの「抗ウイルス薬」に期待できる効果の1つめは、発熱などの症状がある時間を短くしてくれる、つまりインフルエンザが“早く治る”ようになる、という効果です。若くて健康な人であれば、インフルエンザであっても自然に治癒することがほとんどですが、これにはおよそ3~5日(72~120時間)ほどかかります。これだけの時間、高熱や倦怠感などに苦しまされるのはなかなかつらいものがありますので、これを少しでも短くしよう、という目的で薬を使うのは、理に適った対応と言えます。

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児島 悠史
こじま ゆうし

薬剤師 / 薬学修士 / 日本薬剤師会JPALS CL6。
2011年に京都薬科大学大学院を修了後、薬局薬剤師として活動。
「誤解や偏見から生まれる悲劇を、正しい情報提供と教育によって防ぎたい」という理念のもと、ブログ「お薬Q&A~Fizz Drug Information」やTwitter「@Fizz_DI」を使って科学的根拠に基づいた医療情報の発信・共有を行うほか、大学や薬剤師会の研修会の講演、メディア出演・監修、雑誌の連載などにも携わる。
主な著書「薬局ですぐに役立つ薬の比較と使い分け100(羊土社)」、「OTC医薬品の比較の比較と使い分け(羊土社)」。

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