インフルエンザ発症から48時間以上過ぎた場合の薬の効果と患者への対応
インフルエンザの治療に用いる「抗ウイルス薬(ノイラミニダーゼ阻害薬/キャップ依存性エンドヌクレアーゼ阻害薬)」は、発症から48時間以内に使う必要があります。これは、48時間以上が過ぎてから使った際の有効性や安全性は確認されていない、というのが基本的な理由です1)。そのため、「抗ウイルス薬」を使いたい場合には発症からあまり時間をあけずに病院を受診する必要があります。
しかし、発症から12時間以内では迅速抗原検査の感度が65%程度しかないという報告2)もあり、あまりに受診のタイミングが早いとインフルエンザかどうかの鑑別ができない、という問題も起こります。こうした事情から、インフルエンザだとしっかり判明した際には、発症から既に48時間以上が経ってしまっていた、ということもよく起こります。この場合、「抗ウイルス薬」は使っても無意味なのでしょうか。
インフルエンザ発症から48時間以上経ってしまった、若い健康な人は?
前回記事で紹介したとおり、若くて持病もない健康な人の場合、インフルエンザの「抗ウイルス薬」に期待できる効果は、“症状のある時間を24時間ほど短くする”くらいのものですが、これは発症から48時間以内に薬を使った場合の話です。インフルエンザの発症から48時間以上が経ってしまってから抗ウイルス薬を使っても、こうした有症状期間の短縮効果はほとんど期待できない3,4)とされているため、薬を使うメリットは特になく、ただ副作用のリスクを負うだけになります。
日本でも海外でも、ハイリスクに該当しない患者さんについては「発症から48時間以内であれば投与を検討しても良い」と、「48時間以内」という条件つきの基本方針になっている5,6)のには、こうした事情があります。
そのため、患者さんから「なぜ抗ウイルス薬が処方されていないのか」と質問された際には、「抗ウイルス薬は48時間以内に使わないと意味がない」と回答するのが妥当と考えられます。ただし、この「薬を処方しない」という対応は、説明のしかたによっては“不親切”や“冷たい対応”、“見捨てられたように感じる”とネガティブに受け止められる可能性もあります。解熱鎮痛薬などの対症療法の薬はきちんと処方されていることなどを説明し、むしろ不必要な薬を処方しないことこそが“患者想いの対応”だということを理解してもらう必要があります。