保湿剤を使いこなそう!~「ヘパリン類似物質」「白色ワセリン」「尿素」の違いは?
冬のスキンケアに欠かせない保湿剤ですが、医療用医薬品としてよく用いられるものには「ヘパリン類似物質」、「白色ワセリン」、「尿素」の3剤があります。これらはすべて“保湿剤”として扱われることもありますが、実はそれぞれ特徴があり、適した場面、適さない場面が存在します。そこで今回は、薬剤師として押さえておきたい、これら保湿剤の違いを活かした使い分けのポイントを紹介します。
「ヘパリン類似物質」~高価だが、保湿効果・使い心地の両面で優れる
『ヒルドイド』のシリーズに代表される「ヘパリン類似物質」は、その構造式中に親水基をたくさん持ち、周囲の水分を集めて保持する作用を持ちます。これによって保湿効果を発揮しますが、「ヘパリン類似物質」の保湿効果は「白色ワセリン」や「尿素」よりも高く1,2)、実際の皮膚症状や炎症を抑える効果もやや優れる3)、とされています。そのため、アトピー性皮膚炎の治療にも広く用いられており、保湿剤の“代名詞”的な存在になっています。
「ヘパリン類似物質」には剤型も「油性クリーム=ソフト軟膏(油中水型)」、「クリーム(水中油型)」、「ローション」、「フォーム」など様々なものがあり、時と場合に応じて適したものを選べるようになっています。これらの剤型は、基本的に厳密な使い分けが必要なものではありませんが、使い心地の良いクリーム剤やローション剤の方が塗布量は多くなる傾向にある4)、という点は押さえておく必要があります。
一方で、やや高価な値段がネックになって継続使用できないケースがあること、SNS等で“美容目的”の不適切使用を助長するような情報の拡散が横行している5)ことなど、色々と社会的な問題を抱えている側面もあります。薬剤師として、必要とする患者さんのもとにきちんと十分量の薬を届けられるよう、適正使用に十分警戒する必要があります。