薬剤師の気になるトピックをお届け!今月の特集

更新日: 2023年12月13日 児島 悠史

実際の判例から考える調剤過誤と法的責任.1~医師のミスを見過ごした薬剤師の法的責任は?

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もし薬剤師が人為的ミスによって過誤を起こした場合、どのような責任を問われることがあるのか。過去に実際に起きた調剤過誤の内容や問われた法的責任をテーマに、今後同じ過誤を起こさないためにどのような対策が必要かを紹介・解説します。

薬剤師が負うべき「法的責任」とは

調剤過誤が起きた際に薬剤師が負うべき「法的責任」とは、基本的に民事・刑事・行政上の責任のことを指します。代表的なもので言うと、薬剤師の調剤過誤によって何らかの損害を受けた患者さんに対して、薬剤師が補填のために金銭を支払う、あるいは業務上過失致死傷に問われる、薬剤師免許の取り消しや薬局許可の取り消しといった処分を受ける、といったことが挙げられます。

民事責任 ・被害者が債務不履行(民法第415条)や不法行為(民法709条)を理由に損害賠償を求めた
場合、損害を補填するために金銭を支払う責任がある。
刑事責任 ・業務上必要な注意を怠り、患者に傷害を与えたり死亡させたりした場合、業務上過失致死傷
罪(刑法第211条)に問われることがある。
行政上の責任 ・罰金以上の刑に処された薬剤師は、免許取り消しや3年以内の業務停止・戒告という行政処
分を受けることがある(薬剤師法第8条)
・薬機法に違反した場合、薬局の許可取り消し、あるいは業務の停止という行政処分を受ける
ことがある(薬機法第75条)

ここで重要なのは、実際の過誤に関わる調剤や監査・投薬を行った薬剤師だけでなく、薬局そのものや薬局開設者・管理薬剤師にも法的責任が及ぶことがある、という点です。実際の業務に携わる薬剤師だけでなく、薬局の開設者や管理薬剤師も含めて、医療安全のための対策や教育を十分に行い、調剤過誤を防ぐための対策を徹底しなければならない、ということは強く認識しておく必要があります。

調剤過誤事例~医師と薬剤師の両方に法的責任が問われたケース

調剤過誤は、主に「医師のミスを薬剤師も見落としてしまった」というケースと、「医師の処方には問題なかったが薬剤師がミスをした」というケースの2種類があります。本稿(前編)では、医師のミスを薬剤師が見過ごしたまま調剤・投薬してしまったタイプの医療過誤事例を紹介しますが、このタイプの事例で重要なポイントは、「医師のミスを見過ごした薬剤師」にも法的責任が及ぶことがある、という点です。

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児島 悠史
こじま ゆうし

薬剤師 / 薬学修士 / 日本薬剤師会JPALS CL6。
2011年に京都薬科大学大学院を修了後、薬局薬剤師として活動。
「誤解や偏見から生まれる悲劇を、正しい情報提供と教育によって防ぎたい」という理念のもと、ブログ「お薬Q&A~Fizz Drug Information」やTwitter「@Fizz_DI」を使って科学的根拠に基づいた医療情報の発信・共有を行うほか、大学や薬剤師会の研修会の講演、メディア出演・監修、雑誌の連載などにも携わる。
主な著書「薬局ですぐに役立つ薬の比較と使い分け100(羊土社)」、「OTC医薬品の比較の比較と使い分け(羊土社)」。

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