薬剤師の気になるトピックをお届け!今月の特集

更新日: 2023年12月17日 児島 悠史

実際の判例から考える調剤過誤と法的責任.2~薬剤師のミスで問われる法的責任は?

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調剤過誤事例~薬剤師・薬局の法的責任が問われたケース

前回の前編では、医師の処方ミスを見過ごして調剤・投薬してしまった薬剤師の法的責任を紹介しましたが、今回は「医師の処方には問題なかったが、薬剤師が調剤の際にミスをした」という調剤過誤について見ていきたいと思います。

事例1:1,000倍量の「硫酸アトロピン」が調剤された事例(東京地方裁判所 平成29年10月30日判決)

処方箋通りに調剤すれば「硫酸アトロピン」0.5mgのところ、薬局で誤って0.5g(500mg)を調剤して交付してしまい、服用した患者がアトロピン中毒を起こして入院した、という医療事故です。この場合、医師が書いた処方箋には全く問題がないため、薬剤師のみが法的責任を問われることになっていますが、少し注目したいのは「薬局開設者」が損害賠償を請求されている、という点です。

特に令和元年の薬機法改正によって、「薬局開設者」には法令遵守体制の整備が求められるようになりましたが、ここには医療安全も含まれます。もし調剤過誤が起きた場合には、その過誤を起こした薬剤師だけでなく、「薬局開設者」や「管理薬剤師」も責任を問われる可能性があるため、十分に注意しなければなりません。

なお、処方箋に記載されているのが“成分量”なのか“製剤量”なのかを間違うと、こうした1,000倍の過剰投与を起こすことがありますが、類似のヒヤリハット事例は多く報告されているため注意が必要です。

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児島 悠史
こじま ゆうし

薬剤師 / 薬学修士 / 日本薬剤師会JPALS CL6。
2011年に京都薬科大学大学院を修了後、薬局薬剤師として活動。
「誤解や偏見から生まれる悲劇を、正しい情報提供と教育によって防ぎたい」という理念のもと、ブログ「お薬Q&A~Fizz Drug Information」やTwitter「@Fizz_DI」を使って科学的根拠に基づいた医療情報の発信・共有を行うほか、大学や薬剤師会の研修会の講演、メディア出演・監修、雑誌の連載などにも携わる。
主な著書「薬局ですぐに役立つ薬の比較と使い分け100(羊土社)」、「OTC医薬品の比較の比較と使い分け(羊土社)」。

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