薬剤師の気になるトピックをお届け!今月の特集

更新日: 2024年1月3日 児島 悠史

お正月の腕試し薬学クイズ~ワルファリン、納豆はダメで豆腐がOKなのは何故?

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ワルファリンと納豆の相互作用

薬と食品の相互作用は様々ありますが、中でも最も有名なものの1つが、抗凝固薬の「ワルファリン」と「納豆」の相互作用です。「ワルファリン」は、ビタミンKの作用に拮抗することで血栓の形成を抑制する作用を持つ薬ですが、「納豆」のようにビタミンKを豊富に含む食品を食べると、「ワルファリン」の効果が打ち消されてしまい、血栓ができやすい状態に戻ってしまいます。そのため、「ワルファリン」で治療している人は「納豆」の摂取を控える必要があります。

相互作用は、薬そのものの重要性がそこまで高くなく、また影響も小さいものであれば、目くじらを立ててまで注意喚起しなくて良いものもあります。しかし、この「ワルファリン」と「納豆」の相互作用に関しては、そういうわけにはいきません。「ワルファリン」を服用する目的が血栓を防ぐこと、つまり生命に直接関わるような疾患を予防するために服用している重要な薬である上に、「納豆」はほんの10g程度の摂取であっても薬の作用に影響を及ぼす可能性があり1)、その影響は2~3日程度では消失しないほど続く2)など、“ちょっと”だけの摂取でも相互作用の影響は大きいからです(☞医学論文の活用の記事)。

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よく勘違いされるのが、「納豆」という食品から連想される「ネバネバした食べ物」や「発酵食品」、「大豆食品」も同様に避けなければならないのか、という点です。確かに、「モロヘイヤ」なども避けた方が良いですが、これは「ネバネバした食べ物」だからではなく、ビタミンKを豊富に含むことが理由です。同様に、「発酵食品」であることが理由でもないため、ヨーグルトやキムチなども特に制限する必要はありません。

同じ“大豆食品”である「豆腐」は?

さて、ここで改めて考え直してみたいのは、「豆腐」です。「豆腐」は「納豆」と同じ“大豆食品”ですが、「ワルファリン」を服用している患者さんでも制限する必要はありません。これは、「豆腐」にはほとんどビタミンKが含まれないからですが、同じ“大豆食品”なのに何故こんなことが起こるのでしょうか。

食品 ビタミンK(100gあたり)
納豆(糸引き) 870μg
納豆(ひきわり) 930μg
豆腐(木綿) 6μg
豆腐(絹ごし) 9μg

※文部科学省 食品成分データベースより

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児島 悠史
こじま ゆうし

薬剤師 / 薬学修士 / 日本薬剤師会JPALS CL6。
2011年に京都薬科大学大学院を修了後、薬局薬剤師として活動。
「誤解や偏見から生まれる悲劇を、正しい情報提供と教育によって防ぎたい」という理念のもと、ブログ「お薬Q&A~Fizz Drug Information」やTwitter「@Fizz_DI」を使って科学的根拠に基づいた医療情報の発信・共有を行うほか、大学や薬剤師会の研修会の講演、メディア出演・監修、雑誌の連載などにも携わる。
主な著書「薬局ですぐに役立つ薬の比較と使い分け100(羊土社)」、「OTC医薬品の比較の比較と使い分け(羊土社)」。

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