薬剤師の気になるトピックをお届け!今月の特集

更新日: 2024年1月8日 児島 悠史

お正月の腕試し薬学クイズ~「杏仁」には薬効があるのに、「杏仁豆腐」では中毒を起こさない?

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生薬としての「杏仁」

「杏仁(キョウニン)」は、アンズの種子が由来の生薬で、アンズの核を乾燥させた後、これを割って取り出した種子を乾燥させたものを指します。古代から咳止めとして用いられてきましたが、現代でも鎮咳や去痰を目的に「麻黄湯」や「麻杏甘石湯」などの処方に、あるいは便通を目的に「麻子仁丸」や「潤腸湯」などの処方に配合されている、非常に馴染みのある生薬です。このうち、特に鎮咳・去痰作用を発揮するのに重要な成分が、「アミグダリン」と呼ばれる成分です。

「アミグダリン」は、アンズやビワ、モモ、ウメといったバラ科サクラ属の未熟果実の種子に含まれていますが、これをヒトが摂取すると、体内でβ-グルコシダーゼなどの作用によって分解されて毒性を示すシアン化水素(青酸)を発生させます。このシアン化水素は細胞の呼吸を阻害するため、大量に摂取すると頭痛や吐き気、めまい、血中酸素濃度の低下を起こし、ひどい場合には昏睡や死亡などの危険な中毒症状を起こすことがあります。

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アミグダリン摂取による健康被害は何故多いのか?

実際、この「アミグダリン」を含むサプリメントを使用した人が救急搬送されたり1)死亡したり2)した事例は多く報告されています。なぜそんな健康被害が多発しているのかというと、“がん”に効果的だという医療デマがインターネット等でよく出回っていることが1つ理由に挙げられます。

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児島 悠史
こじま ゆうし

薬剤師 / 薬学修士 / 日本薬剤師会JPALS CL6。
2011年に京都薬科大学大学院を修了後、薬局薬剤師として活動。
「誤解や偏見から生まれる悲劇を、正しい情報提供と教育によって防ぎたい」という理念のもと、ブログ「お薬Q&A~Fizz Drug Information」やTwitter「@Fizz_DI」を使って科学的根拠に基づいた医療情報の発信・共有を行うほか、大学や薬剤師会の研修会の講演、メディア出演・監修、雑誌の連載などにも携わる。
主な著書「薬局ですぐに役立つ薬の比較と使い分け100(羊土社)」、「OTC医薬品の比較の比較と使い分け(羊土社)」。

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