お正月の腕試し薬学クイズ~「杏仁」には薬効があるのに、「杏仁豆腐」では中毒を起こさない?
生薬としての「杏仁」
「杏仁(キョウニン)」は、アンズの種子が由来の生薬で、アンズの核を乾燥させた後、これを割って取り出した種子を乾燥させたものを指します。古代から咳止めとして用いられてきましたが、現代でも鎮咳や去痰を目的に「麻黄湯」や「麻杏甘石湯」などの処方に、あるいは便通を目的に「麻子仁丸」や「潤腸湯」などの処方に配合されている、非常に馴染みのある生薬です。このうち、特に鎮咳・去痰作用を発揮するのに重要な成分が、「アミグダリン」と呼ばれる成分です。
「アミグダリン」は、アンズやビワ、モモ、ウメといったバラ科サクラ属の未熟果実の種子に含まれていますが、これをヒトが摂取すると、体内でβ-グルコシダーゼなどの作用によって分解されて毒性を示すシアン化水素(青酸)を発生させます。このシアン化水素は細胞の呼吸を阻害するため、大量に摂取すると頭痛や吐き気、めまい、血中酸素濃度の低下を起こし、ひどい場合には昏睡や死亡などの危険な中毒症状を起こすことがあります。
アミグダリン摂取による健康被害は何故多いのか?
実際、この「アミグダリン」を含むサプリメントを使用した人が救急搬送されたり1)死亡したり2)した事例は多く報告されています。なぜそんな健康被害が多発しているのかというと、“がん”に効果的だという医療デマがインターネット等でよく出回っていることが1つ理由に挙げられます。