薬剤師の気になるトピックをお届け!今月の特集

更新日: 2024年2月8日 児島 悠史

花粉症アップデート.1~抗ヒスタミン薬、医療用医薬品とOTC医薬品の共通点と違い

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2024年もスギ花粉が飛び始める季節が近づいてきました。日本気象協会によると、今シーズンのスギ花粉の飛散量は、東北・北海道以外は昨年に比べると少なめ(70~90%程度)と予想されていますが、それでも例年に比べると“やや多め”で、注意が必要であることに変わりはありません。そんな花粉症治療の最も中心となる薬、内服の「抗ヒスタミン薬」のOTC医薬品は医療用医薬品とどう違うのか、最新のラインナップをおさらいします。

「抗ヒスタミン薬」のラインナップ

内服の「抗ヒスタミン薬」は、OTC医薬品としても非常に多くの種類が販売されています。花粉症治療の第一選択薬として用いられる非鎮静性の薬も、医療用医薬品11種に対してOTC医薬品も6種と豊富に揃っており、セルフメディケーションでも第一線級の薬を使える環境が整っています(表1)。

分類 成分名 発売年 医療用医薬品 OTC医薬品



ルパタジン 2017年 ルパフィン -
デスロラタジン 2016年 デザレックス -
ビラスチン 2016年 ビラノア -
レボセチリジン 2010年 ザイザル -
ロラタジン 2002年 クラリチン クラリチンEX
オロパタジン 2001年 アレロック -
フェキソフェナジン 2000年 アレグラ アレグラFX
ベポタスチン 2000年 タリオン タリオンAR
セチリジン 1998年 ジルテック ストナリニZ
エバスチン 1996年 エバステル エバステルAL
エピナスチン 1994年 アレジオン アレジオン20

表1.非鎮静性の抗ヒスタミン薬の販売状況

確かに、「ルパタジン」や「デスロラタジン」、「ビラスチン」、「レボセチリジン」、「オロパタジン」の5成分はまだOTC医薬品が存在しないため、薬の選択肢がやや狭いのは事実です。しかし、花粉症治療においてこれらの5成分が突出して優れるという報告はなく、ガイドラインでも非鎮静性の薬としてひとくくりで扱われています1)。細かな差に注目してみても、効果が高めとされているのは「セチリジン」2)、「レボセチリジン」3)、「エバスチン」4)あたりで、特に医療用医薬品の5成分が優れるというわけでもありません。そのため、OTC医薬品であっても有効性や安全性の劣る治療しかできないわけではなく、医療用と同じ水準での薬物治療が可能と考えられます。

OTC医薬品では、“より強めの制限”がかけられている

OTC医薬品として販売されている非鎮静性の抗ヒスタミン薬は、いずれも医療用医薬品と同一成分を同一量含む、いわば“医療用と全く同じ薬”です。しかし、医師の処方と薬剤師の調剤のもとで扱う医療用医薬品と違って、OTC医薬品は医師や薬剤師を介さず、インターネット販売などでも入手して使用することができるため、医療用医薬品に比べて様々な面において、使用に際して“より強めの制限”がかけられています。これは、専門家の指導なしでもリスクを抑えて使えるよう、より安全に配慮した設計と言えます。知らない間に用法・用量を逸脱した使い方を推奨してしまうことがないよう、医療用医薬品とOTC医薬品の制限の差はしっかりと把握した上で案内するようにしてください。

※自動車運転の制限

「ロラタジン」や「フェキソフェナジン」は、医療用医薬品・OTC医薬品どちらも服用後の自動車運転に制限はかけられていません。また、「セチリジン」は医療用医薬品・OTC医薬品どちらも服用後の自動車運転は禁止されています。これは共通した注意事項のためわかりやすいのですが、問題は「ベポタスチン」、「エバスチン」、「エピナスチン」の3成分です。

これら3つの成分は、

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児島 悠史
こじま ゆうし

薬剤師 / 薬学修士 / 日本薬剤師会JPALS CL6。
2011年に京都薬科大学大学院を修了後、薬局薬剤師として活動。
「誤解や偏見から生まれる悲劇を、正しい情報提供と教育によって防ぎたい」という理念のもと、ブログ「お薬Q&A~Fizz Drug Information」やTwitter「@Fizz_DI」を使って科学的根拠に基づいた医療情報の発信・共有を行うほか、大学や薬剤師会の研修会の講演、メディア出演・監修、雑誌の連載などにも携わる。
主な著書「薬局ですぐに役立つ薬の比較と使い分け100(羊土社)」、「OTC医薬品の比較の比較と使い分け(羊土社)」。

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