薬剤師も知っておきたい「感染後咳嗽」、長引く咳にはどんな治療が効果的か
「感染後咳嗽」は、それが直接生命に関わるようなものではありませんが、長引く咳によってQOLの低下や睡眠障害を招くだけでなく、ひどい場合には肋骨が折れるといった事態にまで至るケースもあります。そのため、咳の症状を和らげるための治療は需要も高いですが、劇的な効果を発揮するような治療法は確立されていません。そのため、個々の患者背景に合わせて色々な薬を試すのが一般的な対応です。
つまり、「感染後咳嗽」に使われる薬は“コレ”と決まったものがあるわけではなく非常に多様なため、薬剤師としては“どんな薬が選択肢になるのか”、またこれらの薬に期待できる効果や限界点、およその優先順位などを把握しておくことが大切です。
「中枢性鎮咳薬」の効果は?
中枢性鎮咳薬のうち、「コデイン」や「デキストロメトルファン」は長引く慢性の咳に対してプラセボよりも効果的で、一定の症状緩和に有用であることが確認されています1)。そのため海外のガイドライン等でも、「感染後咳嗽」に対する「コデイン」や「デキストロメトルファン」といった中枢性鎮咳薬(咳止め)は、優先順位は高くはないものの、使用を“検討して良い”、とされています2)。
☞「コデイン」
麻薬性鎮咳薬の「コデイン」には、痰の粘度を高める作用があるため、痰の絡む“湿った咳”をしているときには不適です。しかし、痰の絡まない“乾いた咳”が中心の「感染後咳嗽」に対しては、このデメリットが相対的に小さくなるため、十分に選択肢になります。ただし、便秘や眠気、呼吸抑制の副作用があること、依存・耐性リスクもあること、さらに気管支喘息に対しては禁忌である点に注意が必要です。
☞「デキストロメトルファン」
「デキストロメトルファン」は、風邪の際の“湿った咳”が出ているときにも効果が確認されている3)ため、風邪の咳から引き続いて使いやすい薬と言えます。ただし、「デキストロメトルファン」にも濫用リスクがあることには注意してください。
☞「チペピジン」や「エプレジノン」など
これらの鎮咳薬については明確なエビデンスがなく、各ガイドラインでも特に言及はされていません。そのため積極的に使用を推奨する理由はありませんが、副作用リスクや漫然とした使用に繋がるものでなければ、症状緩和を目的に使用することも許容できると考えられます。
「吸入薬」の効果は?
「感染後咳嗽」に効果が確認されている薬としては、「イプラトロピウム」などの抗コリン薬5)やステロイド6)の吸入薬が挙げられます。どちらが有効か、