薬剤師の気になるトピックをお届け!今月の特集

更新日: 2024年4月9日 児島 悠史

抗ヒスタミン薬の眠気はなぜ起こる?そのメカニズムと眠気の強さ

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日本では、花粉症治療に飲み薬の「抗ヒスタミン薬」がよく用いられますが、この薬で避けて通れないのが「眠くなる」という副作用です。OTC医薬品では「ジフェンヒドラミン」が“睡眠改善薬”としても販売されている昨今、抗ヒスタミン薬に「眠くなる」という副作用があることくらいは、一般人でも知っている事実です。薬剤師であればそれが“なぜ起こるのか”を知った上で、“どういう薬のどんな使い方をした際に起こりやすいのか”を踏まえて、処方提案や服薬指導に活かす必要があります。そこで今回は、抗ヒスタミン薬で眠くなるメカニズムと、そこから考えられる「眠気」の出やすさの違いをおさらいします。

眠くなるメカニズムを知れば、どういう薬のどんな使い方で起こりやすいかがわかる

「抗ヒスタミン薬」は、アレルギーの原因となる「ヒスタミン」をブロックすることで効果を発揮しますが、この「ヒスタミン」は、脳では覚醒や集中力の維持などに関わっています。そのため、薬が血液脳関門を通過して脳に到達し、脳のヒスタミン受容体をブロックすると、眠くなる作用が現れることになります。これが、「抗ヒスタミン薬」で眠くなる基本的なメカニズムです。

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このことからわかるのは、抗ヒスタミン薬による眠気の副作用は①血液脳関門を通過しやすい薬ほど起こりやすい、さらに②脳に移行する薬の量が多いほど副作用がより出やすくなる、という2点です。

POINT①:脂溶性の高い(血液脳関門を通過しやすい)薬ほど、眠くなりやすい

薬は、どんな化学構造をしているかによって脂溶性の高い・低いが変わりますが、基本的に脂溶性の高い薬は組織移行性も良く、血液脳関門を通過して脳にも到達しやすい傾向にあります。そのため、抗ヒスタミン薬においては、脂溶性の高い薬ほど眠気も強く現れる傾向にある、ということになります。

実際、古いタイプの抗ヒスタミン薬で眠気も現れやすい「クロルフェニラミン」に比べて、新しいタイプの抗ヒスタミン薬で眠気の少ない「セチリジン」では、その構造に親水基である「カルボキシル基」が導入されることで脂溶性が低くなり、脳へ移行しづらくなっていることがわかります。

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児島 悠史
こじま ゆうし

薬剤師 / 薬学修士 / 日本薬剤師会JPALS CL6。
2011年に京都薬科大学大学院を修了後、薬局薬剤師として活動。
「誤解や偏見から生まれる悲劇を、正しい情報提供と教育によって防ぎたい」という理念のもと、ブログ「お薬Q&A~Fizz Drug Information」やTwitter「@Fizz_DI」を使って科学的根拠に基づいた医療情報の発信・共有を行うほか、大学や薬剤師会の研修会の講演、メディア出演・監修、雑誌の連載などにも携わる。
主な著書「薬局ですぐに役立つ薬の比較と使い分け100(羊土社)」、「OTC医薬品の比較の比較と使い分け(羊土社)」。

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