薬剤師の気になるトピックをお届け!今月の特集

更新日: 2024年4月15日 児島 悠史

ハイリスク薬、服薬指導と薬歴記載のポイントは?~1.メトホルミンと消化器症状

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「メトホルミン」ってどんな薬?

「メトホルミン」は、肝臓でのグリコーゲン分解による糖新生抑制、末梢におけるインスリン抵抗性の改善、小腸からの糖吸収抑制といった作用によって、インスリン分泌を介さずに血糖値を低下させる薬です。血糖値を下げる糖尿病治療では、血糖値の下がり過ぎによって起こる「低血糖」がよく問題になりますが、このような作用メカニズムを持つ「メトホルミン」は、単独で用いる限りこの「低血糖」を起こしにくい1)、という特徴があります。また、薬によってインスリン分泌を促すと、血液中のブドウ糖が細胞内に多く取り込まれるようになる等の作用によって体重が増えやすくなりますが、「メトホルミン」ではこうした体重増加もあまり起こさない2,3)、というメリットもあります。

さらに、「メトホルミン」は肥満傾向にある2型糖尿病患者に対する心血管イベント・死亡リスクの抑制効果が明確に確認されている3,4)一方で、1950年頃から用いられている古い薬であるために薬価が安いことから、費用対効果の面でも優れています。

  単独では「低血糖」を起こしにくい
  体重増加が起こりにくい
  心血管イベント・死亡リスクの抑制効果が確認されている
  古い薬のため薬価が安い

※「メトホルミン」の長所

これらの点から、欧米では経口の糖尿病治療薬を用いる際、基本的に「メトホルミン」が“第一選択”として用いられており5)、日本でも肥満傾向にある2型糖尿病患者に対する“第一選択”に選ばれています6)。つまり、「メトホルミン」は現代の2型糖尿病治療において非常に重要で処方される機会も多いため、薬剤師が“ハイリスク薬”としての服薬指導を行うことも頻繁にある薬と言えます。

「メトホルミン」で重点的に服薬指導すべきポイントは?

そんな処方頻度の高い「メトホルミン」に対して、薬剤師は“ハイリスク薬”としてどのように対応していく必要があるのでしょうか。たとえば「薬局におけるハイリスク薬の薬学的管理指導に関する業務ガイドライン(第2版)」では、「メトホルミン」のような糖尿病治療薬において、特に重点的に注意すべき事項として下記のようなポイントが挙げられています7)。薬の新規処方・変更時などに「特定薬剤管理指導加算」を算定する場合は、これらのポイントを踏まえた服薬指導を行い、その内容を薬歴に記録するのが基本になります。

患者に対する処方内容(薬剤名、用法・用量等)の確認
服用患者のアドヒアランスの確認(Sick Day時の対処法についての指導)
副作用モニタリング及び重篤な副作用発生時の対処方法の教育(低血糖及び低血糖状態出現時の自覚症状とその対処法の指導)
効果の確認(適正な用量、可能な場合の検査値(HbA1cや血糖値)のモニター)
一般用医薬品やサプリメント等を含め、併用薬及び食事との相互作用の確認

※「糖尿病用剤」の薬学的管理指導において、特に注意すべき事項

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児島 悠史
こじま ゆうし

薬剤師 / 薬学修士 / 日本薬剤師会JPALS CL6。
2011年に京都薬科大学大学院を修了後、薬局薬剤師として活動。
「誤解や偏見から生まれる悲劇を、正しい情報提供と教育によって防ぎたい」という理念のもと、ブログ「お薬Q&A~Fizz Drug Information」やTwitter「@Fizz_DI」を使って科学的根拠に基づいた医療情報の発信・共有を行うほか、大学や薬剤師会の研修会の講演、メディア出演・監修、雑誌の連載などにも携わる。
主な著書「薬局ですぐに役立つ薬の比較と使い分け100(羊土社)」、「OTC医薬品の比較の比較と使い分け(羊土社)」。

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