薬剤師の気になるトピックをお届け!今月の特集

更新日: 2024年4月19日 児島 悠史

ハイリスク薬、服薬指導と薬歴記載のポイントは?~2.メトホルミンと乳酸アシドーシス

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前編では、「メトホルミン」で最も頻度の高い副作用である“消化器症状”について、その症状や傾向、対策といった服薬指導のポイントを解説しましたが、「メトホルミン」にはもう1つ特徴的な副作用、“乳酸アシドーシス”があります。“乳酸アシドーシス”は、頻度は稀なものの予後が悪く、死亡例も報告されているような、特に警戒が必要な副作用です。今回は、この“乳酸アシドーシス”に関した服薬指導のポイントを解説します。

「メトホルミン」で、何故「乳酸アシドーシス」が起こる?

ヒトの体内では「グルコース」を「ピルビン酸」に分解する「解糖系」と呼ばれる代謝経路があります。ここで生成された「ピルビン酸」は、一般的にはそのまま「クエン酸回路」や「電子伝達系」に入って代謝されていきますが、酸素供給などが追い付かない場合には「乳酸」へと代謝されます。通常、この「乳酸」は糖新生に用いられるなどして消費されるため、特に問題は起こりません(図左の状態)。

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ところが、「メトホルミン」は乳酸からの糖新生を抑制する作用があるため、「メトホルミン」を服用している人ではこの乳酸の蓄積が起こりやすくなります。また、この乳酸の分解に必要なNADが不足していると、乳酸はさらに蓄積しやすくなります。加えて、低酸素状態では好気性の「クエン酸回路」が動かないため、嫌気性の乳酸生成へと進む割合が増加していきます。こうした種々の条件が揃うと、乳酸が過剰に蓄積して身体が酸性に傾く“乳酸アシドーシス”を起こすことになります(図右の状態)。

“乳酸アシドーシス”では、下痢や吐き気・嘔吐といった症状が現れ、ひどい場合には過呼吸・低血圧・低体温を起こし、場合によっては死亡に至ることになります。近年は治療法も発達して致死率は低下していますが、それでも「メトホルミン」関連の“乳酸アシドーシス”の致死率は25%程度とする報告もある1)など、非常に危険な副作用であることに変わりはありません。

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児島 悠史
こじま ゆうし

薬剤師 / 薬学修士 / 日本薬剤師会JPALS CL6。
2011年に京都薬科大学大学院を修了後、薬局薬剤師として活動。
「誤解や偏見から生まれる悲劇を、正しい情報提供と教育によって防ぎたい」という理念のもと、ブログ「お薬Q&A~Fizz Drug Information」やTwitter「@Fizz_DI」を使って科学的根拠に基づいた医療情報の発信・共有を行うほか、大学や薬剤師会の研修会の講演、メディア出演・監修、雑誌の連載などにも携わる。
主な著書「薬局ですぐに役立つ薬の比較と使い分け100(羊土社)」、「OTC医薬品の比較の比較と使い分け(羊土社)」。
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