薬剤師の気になるトピックをお届け!今月の特集

更新日: 2024年6月3日 児島 悠史

半錠可否の調べ方 2~半分に割っても良い「徐放錠」の仕組み

半錠可否の調べ方 2~半分に割っても良い「徐放錠」の仕組みメインの画像1
この記事でわかること!
  • ひとことに徐放錠と言っても、その機序は様々
  • 徐放錠は、その徐放性を保つため“半分に割らない”のが基本
  • 「割線」のある徐放錠は、例外的にその割線に沿って半分にすることができる

前編で解説した通り、有効成分がゆっくりと溶け出す制御システムが施されている「徐放錠」の場合、半分に割るとこの徐放性が失われてしまい、血中濃度が急激に上昇する、あるいは必要な血中濃度を短時間しか維持できない、といった事態を招くことになります。

そのため、基本的に「徐放錠」は“半分に割ってはいけない錠剤”として認識しておく必要があります。

ところが、薬の中には「割線のついた徐放錠」というものも存在します。「割線」があれば“半分に割っても良い錠剤”と判断できるはずですが、「徐放錠」であれば分割は避ける必要があります。

後編の今回は、この矛盾した製剤について解説します。

半錠可否を調べるポイント④:「徐放システム」の違い

ひとことに「徐放錠」と言ってもその制御メカニズムは製剤によって様々ですが、形態によって「シングルユニット型」と「マルチプルユニット型」の2つに大別することができます。

「シングルユニット型」とは、錠剤全体で徐放性を発揮するように設計されたもののことで、基本的に消化管内でも錠剤のかたちを保ったまま、徐々に有効成分を放出します。「マルチプルユニット型」とは、錠剤そのものは消化管内ですみやかに崩壊しますが、錠剤から放出された小さな顆粒1つ1つに徐放性が施されているために、有効成分はゆっくりと吸収されるもののことです。

半錠可否の調べ方 2~半分に割っても良い「徐放錠」の仕組みの画像1

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さらに、この「シングルユニット型」と「マルチプルユニット型」の中にも様々な放出制御メカニズムがあり、このメカニズムによって半錠可否は異なりますが、一部の徐放錠には「割線」の入った“半錠にできる錠剤”が存在します。

形態 制御メカニズム 代表的な製剤



ワックス
マトリックス
基材に放出抑制物質のワックスを用い、基材の溶解
に合わせて徐々に薬が放出されるようにしたもの
ヘルベッサー錠
コンチン 基材に放出抑制物質の高級脂肪アルコールなどを用い、
基材の溶解に合わせて徐々に薬が放出されるように
したもの
オキシコンチン錠
ユニコン錠(割線あり)
グラデュメット 多孔性プラスチック格子間に薬を閉じ込めることで、
薬の放出速度を制御したもの
フェログラデュメット錠
セロケンL錠(割線あり)
ペンタサ錠(割線あり)
ロンタブ 徐放性の核を、速溶性の層で包んだもの アダラートCR錠
レペタブ 腸溶性の核を、速溶性の層で包んだもの デパケンR錠
スパンタブ 速溶層と徐放層を重ねたもの
(※錠剤の裏表で色が異なることがある)
ツートラム錠


スパスタブ 速放性顆粒と徐放性顆粒を打錠したもの
(※錠剤に斑点模様が見えることがある)
テオロング錠
テオドール錠100mg、
200mg(割線あり)

ワックスマトリックス/コンチン

半錠可否の調べ方 2~半分に割っても良い「徐放錠」の仕組みの画像2

ワックスマトリックスとコンチンは、錠剤の基材に放出抑制物質を用いることで、消化管内で錠剤が徐々に崩壊するように設計したものです。

錠剤そのものがゆっくりと溶けることで、有効成分もそれに合わせてゆっくりと放出されるため、徐放性が発揮されます。半分に分割しても錠剤の崩壊スピードが変わらないものは、「割線」があり“半分に割る”ことができます。

ワックスマトリックスの代表的な薬剤としては、ジルチアゼムの徐放製剤である「ヘルベッサー錠」が挙げられます。「ヘルベッサー錠」は分割すると溶出が加速する恐れがあるため、半錠にすることはできない、とされています(割線もありません)1)

コンチンの代表的な薬剤としては、オピオイドの「オキシコンチン錠」やテオフィリン徐放製剤の「ユニコン錠」が該当します。「ユニコン錠」の200mgと400mgには「割線」が入っており2)、これに沿って分割することができます(※後発医薬品の「テオフィリン徐放U錠も同じ」)。

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児島 悠史
こじま ゆうし

薬剤師 / 薬学修士 / 日本薬剤師会JPALS CL6。
2011年に京都薬科大学大学院を修了後、薬局薬剤師として活動。
「誤解や偏見から生まれる悲劇を、正しい情報提供と教育によって防ぎたい」という理念のもと、ブログ「お薬Q&A~Fizz Drug Information」やTwitter「@Fizz_DI」を使って科学的根拠に基づいた医療情報の発信・共有を行うほか、大学や薬剤師会の研修会の講演、メディア出演・監修、雑誌の連載などにも携わる。
主な著書「薬局ですぐに役立つ薬の比較と使い分け100(羊土社)」、「OTC医薬品の比較の比較と使い分け(羊土社)」。

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