半錠可否の調べ方 2~半分に割っても良い「徐放錠」の仕組み
- ひとことに徐放錠と言っても、その機序は様々
- 徐放錠は、その徐放性を保つため“半分に割らない”のが基本
- 「割線」のある徐放錠は、例外的にその割線に沿って半分にすることができる
前編で解説した通り、有効成分がゆっくりと溶け出す制御システムが施されている「徐放錠」の場合、半分に割るとこの徐放性が失われてしまい、血中濃度が急激に上昇する、あるいは必要な血中濃度を短時間しか維持できない、といった事態を招くことになります。
そのため、基本的に「徐放錠」は“半分に割ってはいけない錠剤”として認識しておく必要があります。
ところが、薬の中には「割線のついた徐放錠」というものも存在します。「割線」があれば“半分に割っても良い錠剤”と判断できるはずですが、「徐放錠」であれば分割は避ける必要があります。
後編の今回は、この矛盾した製剤について解説します。
半錠可否を調べるポイント④:「徐放システム」の違い
ひとことに「徐放錠」と言ってもその制御メカニズムは製剤によって様々ですが、形態によって「シングルユニット型」と「マルチプルユニット型」の2つに大別することができます。
「シングルユニット型」とは、錠剤全体で徐放性を発揮するように設計されたもののことで、基本的に消化管内でも錠剤のかたちを保ったまま、徐々に有効成分を放出します。「マルチプルユニット型」とは、錠剤そのものは消化管内ですみやかに崩壊しますが、錠剤から放出された小さな顆粒1つ1つに徐放性が施されているために、有効成分はゆっくりと吸収されるもののことです。
さらに、この「シングルユニット型」と「マルチプルユニット型」の中にも様々な放出制御メカニズムがあり、このメカニズムによって半錠可否は異なりますが、一部の徐放錠には「割線」の入った“半錠にできる錠剤”が存在します。
形態 | 制御メカニズム | 代表的な製剤 | |
シ ン グ ル |
ワックス マトリックス |
基材に放出抑制物質のワックスを用い、基材の溶解 に合わせて徐々に薬が放出されるようにしたもの |
ヘルベッサー錠 |
コンチン | 基材に放出抑制物質の高級脂肪アルコールなどを用い、 基材の溶解に合わせて徐々に薬が放出されるように したもの |
オキシコンチン錠 ユニコン錠(割線あり) |
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グラデュメット | 多孔性プラスチック格子間に薬を閉じ込めることで、 薬の放出速度を制御したもの |
フェログラデュメット錠 セロケンL錠(割線あり) ペンタサ錠(割線あり) |
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ロンタブ | 徐放性の核を、速溶性の層で包んだもの | アダラートCR錠 | |
レペタブ | 腸溶性の核を、速溶性の層で包んだもの | デパケンR錠 | |
スパンタブ | 速溶層と徐放層を重ねたもの (※錠剤の裏表で色が異なることがある) |
ツートラム錠 | |
マ ル チ |
スパスタブ | 速放性顆粒と徐放性顆粒を打錠したもの (※錠剤に斑点模様が見えることがある) |
テオロング錠 テオドール錠100mg、 200mg(割線あり) |
ワックスマトリックス/コンチン
ワックスマトリックスとコンチンは、錠剤の基材に放出抑制物質を用いることで、消化管内で錠剤が徐々に崩壊するように設計したものです。
錠剤そのものがゆっくりと溶けることで、有効成分もそれに合わせてゆっくりと放出されるため、徐放性が発揮されます。半分に分割しても錠剤の崩壊スピードが変わらないものは、「割線」があり“半分に割る”ことができます。
ワックスマトリックスの代表的な薬剤としては、ジルチアゼムの徐放製剤である「ヘルベッサー錠」が挙げられます。「ヘルベッサー錠」は分割すると溶出が加速する恐れがあるため、半錠にすることはできない、とされています(割線もありません)1)。
コンチンの代表的な薬剤としては、オピオイドの「オキシコンチン錠」やテオフィリン徐放製剤の「ユニコン錠」が該当します。「ユニコン錠」の200mgと400mgには「割線」が入っており2)、これに沿って分割することができます(※後発医薬品の「テオフィリン徐放U錠も同じ」)。