【点眼薬の順序をおさらい】水性点眼液と懸濁性点眼液はどちらを先に使うのが正解?
- 点眼液は「水性」「懸濁性」に大別される(添付文書で調べられる)
- 吸収に時間のかかる「懸濁性点眼液」は、後で使うのが一般的
- 同じ「水性」同士、「懸濁性」同士であれば、“重要な薬”を後に点眼する
緑内障や白内障、あるいはアレルギー性結膜炎、ドライアイなど、点眼薬を使った薬物治療は様々な場面で行われるため、人によっては複数の点眼薬を処方されることがあります。このとき、これら複数の点眼薬は「どういう順序」で使えば良いのか、きちんと説明できるでしょうか。今回は、この「点眼薬の順序」について基本的な考え方を解説します。
点眼薬の順序の基本①:「水性」を先に、「懸濁性」を後に
点眼薬を連続で使用すると、先に点眼した薬は後に点眼した薬で洗い流されてしまうことになります。
これでは、先に点眼した薬の効果を十分に得ることはできません。そのため、複数の点眼液が処方されている際は、およそ5分程度の間隔をおいて点眼を行うことが推奨されています。ただし、すべての点眼液で「5分程度」で良いわけではありません。
点眼液には様々なタイプのものがありますが、大雑把には「水性点眼液」と「懸濁性点眼液」の2つに大別されます。「水性点眼液」は有効成分を精製水に溶解させたもの、「懸濁性点眼液」は有効成分を溶解ではなく懸濁させたものです。一般的に、「水性点眼液」の有効成分は水に溶けやすいもののため、点眼後も比較的速やかに吸収されますが、「懸濁性点眼液」の有効成分は水に溶けにくく吸収にも時間がかかる傾向にあります。
そのため、「水性点眼液」の点眼後は確かに5分程度の間隔で十分とされています1)が、「懸濁性点眼液」の場合には次の点眼までおよそ10分以上の間隔をあける必要があります2)。
この点眼後の時間間隔の違いを踏まえて、吸収の早い「水性点眼液」を先に、吸収の遅い「懸濁性点眼液」を後に、という順序で使うのが一般的です。代表的な例としては、「水性点眼液(例:クラビット点眼液)」→「懸濁性点眼液(例:フルメトロン点眼液)」という、抗菌薬とステロイドの組み合わせがあります。
点眼液の「水性」か「懸濁性」かの調べ方
たとえば、「ヒアレイン点眼液0.1%」は水性点眼液、「フルメトロン点眼液0.02%」は懸濁性点眼液ですが、この分類は添付文書の「3.2 製剤の性状」を確認すればわかるようになっています。
ここに“懸濁”とあれば「懸濁性点眼液」だと判断することができます(※懸濁性点眼液は用事振盪も必要です)。
なお、ほとんどの点眼液は「水性点眼液」のため、分類を覚える際には数の少ない「懸濁性点眼液」の方を把握しておくのが現実的です。
ただし、商品名に「懸濁」という単語の入っていないものや、同成分の規格違いによって「水性」と「懸濁性」が変わるものなども含まれるため注意が必要です。
一般名 | 商品名 |
タクロリムス | タリムス点眼液0.1% |
ネパフェナク | ネバナック懸濁性点眼液0.1% |
ピマリシン | ピマリシン点眼液5%「センジュ」 |
ピレノキシン | ピレノキシン懸濁性点眼液0.005%「参天」 |
フルオメトロン | フルメトロン点眼液0.02%、フルメトロン点眼液0.1% フルオメトロン点眼液0.02%「センジュ」・「日点」・「ニットー」・「NIT」・「わかもと」 フルオメトロン点眼液0.05%「センジュ」・「日点」 フルオメトロン点眼液0.1%「センジュ」・「日点」・「ニットー」・「NIT」・「わかもと」 |
ブリモニジン +ブリンゾラミド |
アイラミド配合懸濁性点眼液 |
チモロール +ブリンゾラミド |
アゾルガ配合懸濁性点眼液 |
ブリンゾラミド | エイゾプト懸濁性点眼液1% ブリンゾラミド懸濁性点眼液1%「サンド」・「センジュ」・「ニットー」 |
レバミピド | ムコスタ点眼液UD2% レバミピド懸濁性点眼液2%「参天」 |
レボカバスチン | レボカバスチン点眼液0.025%「三和」・「わかもと」・「杏林」・「サワイ」・「ニットー」・ 「FFP」・「JG」・「TS」・「VTRS」 |
※主な「懸濁性点眼液」の例