【点眼薬の順序をおさらい】ゲル化製剤や眼軟膏を使用タイミングや間隔を知ろう
- 「ゲル化製剤」は、前の点眼から10分以上あけて、点眼液として最後に使う
- 「眼軟膏」は、他の点眼液を全て使い終わってから使う
- 「水性」→「懸濁性」→「ゲル化製剤」→「眼軟膏」の順が基本
点眼薬の多くは「水性点眼液」か「懸濁性点眼液」に分類されますが、前編で解説した通り、吸収の早い「水性点眼液」を先に、吸収が遅く次の点眼までにより長い時間をあける必要がある「懸濁性点眼液」を後に使うのが基本です。
また、同じ性質のもの同士であれば、重要な薬を後にして、“洗い流されてしまう”影響を小さくするのが一般的です。
しかし、点眼薬の中には他にも「ゲル化製剤」や「眼軟膏」といったタイプの薬もあります。今回は、こうした特殊な製剤が処方されている際に、その使用順序や間隔はどのように考えれば良いのか、をおさらいします。
点眼薬の順序の基本②:「ゲル化製剤」は、前の点眼から10分以上の間隔をあけて、最後に使う
「ゲル化製剤」とは、元々の薬は液体をしているものの、点眼した際に体温や涙に含まれる成分などに反応して“ゲル化”し、持続的に効果を発揮するように設計された点眼薬のことです。
日本では、抗菌薬の「オフロキサシン」や、緑内障治療薬の「チモロール」「カルテオロール」「ラタノプロスト」といった製剤で用いられています。
一般名 | 商品名 | メカニズム |
オフロキサシン | オフロキサシンゲル化点眼液 | 熱に反応してゲル化 |
チモロール | リズモンTG点眼液 | 熱に反応してゲル化 |
チモプトールXE点眼液 | 涙液と反応してゲル化 | |
カルテオロール | ミケランLA点眼液 | 涙液と反応してゲル化 |
カルテオロール+ラタノプロスト | ミケルナ配合点眼液 | 涙液と反応してゲル化 |
※主な「ゲル化製剤」の例
これらの点眼薬は、ゲル化して眼に長時間留まり、有効成分を持続的に放出することでカタログスペック通りの効果を発揮するため、ゲル化が妨げられてしまうと治療に支障を来たすことになります。
たとえば、前の点眼液を使ってすぐに使うと、前の点眼液と混ざる、涙液が少ない等の理由で薬液がきちんとゲル化しない可能性があります。また、この薬のあとすぐに別の点眼薬を使うと、薬液が洗い流されてしまって持続的な効果を得られないことになります。
そのため、「ゲル化製剤」は「前の点眼から10分以上の間隔をあけて」、なおかつ「最後に点眼」する必要があります1)。
点眼薬の順序の基本③:「眼軟膏」は、すべての点眼薬を使ってから“最後”に使う
「眼軟膏」は眼に使う軟膏剤のことを指しますが、基本的に軟膏基材は水を弾く性質があります。そのため、眼の表面が軟膏で覆われている状態で点眼薬を使っても、薬液は弾かれてしまうために効果を得ることはできません。
このことから、「眼軟膏」は「ゲル化製剤」も含めた“すべての点眼薬を使い終わってから最後に使う”のが原則です。
つまり、点眼薬は「水性点眼液」→「懸濁性点眼液」→「ゲル化製剤」→「眼軟膏」の順序で用いるのが基本になります。イレギュラーな処方や間違いが起きた際にも柔軟な対応ができるよう、それぞれの背景や理由まで合わせて押さえておきましょう。